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ぼんやりと目が覚める。

カーテンの向こうは明るく、とっくに日が昇っていることを示していた。今日は休みだ。
テレビをつけると、見慣れた顔が画面の向こうで笑っている。
昨日は遅くなったはずなのに元気だなぁ、なんて思ったけれど、生放送ではないか。

そんな彼のせいで私は昨日の夜あまり寝付けなかった。テレビ相手に文句を言ってやりたいくらいだ。
あれは、夢だったんじゃないか。なんて、そう思ってしまえたら楽なのに。

ピピッというお湯が沸いた音に呼ばれて立ち上がる。
コーヒーにしようか紅茶にしようか、何か温かいものが飲みたいなと迷って、インスタントのコーヒーに手を伸ばした。

褐色のコーヒーにクリームの白が混ざって渦を巻く。
ちびちびとそれを飲んでいると、そんなタイミングを見計らったかのようにスマホが震えた
表示された名前に、出ようかどうか迷って宙を舞った指は、それでも通話ボタンを押した。


『もしもーし、起きてた?』

私が言葉を発するより先に、電話の向こうが話し始める。相手を間違えていたらどうするんだろう

「起きてたよ」
『そ、Aの事だからまだ寝てるかもなって』
「失礼な」

実際のところさっき起きたんだから、あながち間違っても居ないけれど
一体なんの要件だろうって、そわそわしていると、私の心中を見抜いたように風磨くんは喉の奥で笑う

『昨日のこと、忘れようとしてんじゃないかと思って』
「……っそんなこと、」

図星だった、むしろ夢だったと思おうとしていたところだ。
何か言い返さなければと口を開いたが言葉が見つからない。

彼は私を逃がしてはくれない
そんなことは解っていた
だからきちんと断ろうとしたのに、風磨くんはそれを聞いてはくれない。
私に、どうしろっていうんだ。


『今日、休みだよな?』

少しの沈黙の後、投げられた問いに一瞬どう返答しようかと迷ったけれど、私が暦通りの仕事をしていることなんて彼にはバレバレで

「休みだよ」
『夜、そっちいくわ』
「は?」

私の言葉を待たずに通話は切れた。
思わず時計を確認する
私に予定があるかもとは思わないんだろうか
いや、予定なんてないけど

頭の中でどんなに文句を言っても、結局は彼の言いなりになってしまう自分もたいがいだと思う。

マグカップの中に残った少しぬるくなったコーヒーをあおって、私は洗面所に走った。

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作者名:しい | 作成日時:2024年2月7日 15時

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