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色んなことから目を背けたまま月日は過ぎていく。
風磨くんとは、何気ない連絡は交わすものの、あれ以来、会うことはなかった。
元彼からも何通か連絡が来ていたけれど、スマホの中で未読のまま。
冬はあっという間に深まって、吐いた息は白く凍った
「え、それって浮気されてたって事ですか？」
年に何度か開催される会社の飲み会。
ほぼ強制参加だけど、仕事のメンバーは同世代も多いし、それほど苦痛な会ではない。
何気ない話の流れから、私が彼氏と別れたことをポロリと溢すと、いくつか歳下の後輩男子がオブラードに包むことなく、そう言った。
「ちょっと、率直過ぎ」
「いいの、その通りだと思うし」
同僚が後輩を咎めてくれたけれど、場の空気を悪くするのも嫌だし、私は何も気にして無いように笑って、話を濁す。
「Aさん、今フリーだったら俺にもチャンスあります？」
「……えぇ？」
思わぬ後輩の立候補に一瞬戸惑ってしまったけれど、すぐに立て直して「飲み過ぎだよ」と水を差し出した。
「実は俺入社した時から良いと思ってて」
「いやほんと、お前飲みすぎ！！すいません！」
向かいの席、前のめりでぐいぐい攻めてくる後輩くんを周りの男性陣が咎めて引っ込める。
あぁ若いって良いなぁなんて、連れ去られる後輩くんを横目に、私はひとつ息を吐いた。
隣に座る同僚と目があって、おそらく同じことを考えていたであろう彼女と苦笑を交わす。
「でもさぁ。A」
「ん？」
「そんな振られ方した割には元気だね？」
「……え」
「Aも、他にいい人いたりして？」
彼女の言葉に、脳裏に浮かんだ顔に、思わず固まってしまう。こんな態度じゃバレバレじゃないかって思ったけどもう遅い。
何か言いたげな彼女から逃れたくて、目線を下げる。
ふふ、と笑いながら同僚は口を開いた
「モテるなーAは」
「そんなんじゃないし」
「またまた」
まさかあの後輩くんじゃないよね？と、訝しげな顔をしてみせた彼女に、思いっきり首を横に振る。
彼女の尋問から逃げられないと察した私は、小さく息をつくと言葉を流した
「……怖いんだよね」
「怖い？」
「また同じ事になったらって」
私が笑えてるのは風磨くんのおかげだ。
でも、好きだと思えば、いつか終わりが来てしまう。
失いたくないなら始めなければいいって、彼氏と別れたあの日からずっとそんな事を思っていた。
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作者名：しい | 作成日時：2024年2月7日 15時
