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他に好きな人がいる
その子も俺のことを好きだと言ってくれている
Aのことは好きだけど、それはもう恋ではなく情だ

回りくどく、しどろもどろに話す彼氏の話を要約すると、そう言ったところだろうか
最近会えないって言われてたのは、そういうことか、他に女の子がいたのかって、どこか冷静な私はそう思った


「その子と……一緒になるの?」
「まぁ、」

私の質問に、彼氏は照れたようにはにかむ
何照れてるんだよって怒りたかったけれど、それを通り越してもう何も言えない。

「Aだって、風磨と仲良くやってるんでしょ?」
「……は?」

どうして風磨くん?って、その疑問は顔に出てたのか、「違うの?」って首を傾げる彼氏

「よく一緒に飲みに行ってるし」
「……それは、前からでしょ」

告白されたとは、惹かれていたとは、言えない。
そう、やましい事は私にだってある。

私の様子を伺うように、目の前の彼氏は口を開く


「ずっと相談してたんだよね」
「……え?」


ずっと相談って、何を?


「風磨なら、うまくフォローしてくれるかなって」

フォローって、何?

「待って、風磨くんは……知ってたの?」

かろうじて口から出た質問に、彼氏はケロッとした顔で「知ってたよ。結構前から」と、言い放った。
その言葉に、くらりとめまいを覚える

だから、今だったんだって。

風磨くんは、彼氏と結婚するって言って浮かれている私を見てどう思ってたんだろう。
可哀想だって思ったんだろうか、そして、彼から私のフォローを頼まれて、だから、あんな事

「A?」

シンとした部屋。呼ばれた名前にハッとした。
今、この落胆した気持ちは何に対してなんだろう。彼氏に別れを告げられたから?それとも、


「……解った。幸せにね」


泣くこともせず平然と言い放ったセリフに、温度はなかった。

彼氏は「ごめんな」って、感傷に浸った顔で言うけれど、それすらも滑稽に思えて、笑えてくる

なんでもいいから、もう、1人にして欲しかった

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作者名:しい | 作成日時:2024年2月7日 15時

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