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2人の間に、コーヒーの香りがゆらゆらと漂う
いつも通りだって自分に言い聞かせて、ソファーに居る風磨くんの隣にポスリと座った。

「風磨くん、明日仕事?」
「なに、休みだったら泊めてくれんの?」
「とめません。」

明日の朝早いのかな、っていう心配は、その態度で吹き飛んだ。
だけど彼がそうやって気を使わないようにしてくれてるのも、わかる。

コーヒーを飲む風磨くんを、チラリと盗み見る

周りに可愛い人も綺麗な人もたくさん居るだろうし、どうして私なんだろう
そして、どうして今更
そんな聞くことのできない問いが頭の中をぐるぐると巡った

テレビから流れているのは、特に何の興味もないバラエティ番組で、何か映画でも流そうかとサブスクの画面を開いていく
ふと、昔彼氏と観た映画が目に入って手を止めてしまって
風磨くんが、チラリとこちらを見たのがわかった

「観たいの?これ」
「いや、昔観たことあって」
「へぇ?いいよね、これ」

何もかも知ったような瞳
2人の間の距離は数センチ
その瞳に吸い込まれそうだと思ったのと家のチャイムが鳴りひびいたのは同時だった


こんな時間に連絡をせずに来るのは彼氏しかいない。
やばい、どうしよう。
そう一瞬焦ったけれど、別にやましいことは何もしていない

「多分、彼氏なんだけど」
「……出るの?」
「出る、よ」

どうしてそんなこと聞くのって、その言葉は喉まで出かかったけれど飲み込んだ。
もしも風磨くんが、出ないで、って言ったら私はどうするつもりなの。

小さく、風磨くんが息をついたのがわかった。
だけどそれに気づかないふりをして、私はソファーから立ち上がると、インターフォンをとった。

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作者名:しい | 作成日時:2024年2月7日 15時

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