（36-��.） ページ3
Aは答えられなかった。
大我と出会い、同棲し始めて、きっと別れるタイミングは何度もあったはずだ。
しかし、Aはずっとその決断から逃げてきた。
大我がいる所は、それほどAにとって心地の良くて、安全で、楽な場所だった。
｢あんたと出会う前は大我様の隣は俺だった。なのに、あんたが来てからはずっと、俺は大我様から1歩後ろに立つようになった｣
感情的になるジェシーの瞳からは大粒の涙がボロボロと流れ、初めて聞くジェシーの本音にAも困惑の表情を浮かべる。
ジェシーの大我への気持ちは、主従関係を超えた何か深いものがあった。
もし、ジェシーが女として生まれ大我と出会っていたのなら、それはきっと恋という感情となっていたのだろう。
しかし、運命は残酷で、ジェシーのその気持ちは恋にはならず、狂気にも似た愛となってしまった。
そして、その気持ちを加速させてしまったのは、紛れもなく自分なのだと、Aは気付いた。
｢…ごめんなさい。私は、身を引くから｣
｢もう遅いんだよ!!もう…っ!!!｣
ジェシーの声がキッチンに響き渡った時、玄関の方で扉の開く音が聞こえた。
｢ただいま、Aー?｣
大我の声はキッチンに届き、ジェシーは急いでAから離れ涙を拭う。
Aも表情を改め、少し駆け足で大我のもとへと向かった。
｢おかえ、り……え?｣
大我の姿を見た途端、Aは驚きで言葉を失った。
白いタキシードに身を包んだ大我は、大きなバラの花束を持って微笑んでいた。
その光景はまるで、ふたりが出会ったあの日のようで、Aは脳内で、その時の言葉を思い出していた。
『僕と、結婚しませんか?』
そして、大我は跪き、Aに花束を差し出した。
｢僕と、結婚しませんか?｣
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 197人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さいか(プロフ) - リリーさん» コメントありがとうございます！最後まで楽しんで頂けたなら、本当によかったです！ぜひぜひ、次回作も楽しみに待っていてください！ (2019年2月3日 0時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - なるみやさん» コメントありがとうございます！お褒めの言葉とても嬉しいです！最後まで書いてよかったと思えました。ぜひ、次のきょもほくもよろしくお願いします！ (2019年2月3日 0時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 完結お疲れ様です！今回も素敵な作品で最後まで物語の世界へ引き込まれていきました。何度も読み返したくなるような…。次回作も期待してます！ (2019年2月2日 22時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
なるみや(プロフ) - はじめまして。完結おめでとうございます！とても言葉のチョイスが素敵で惹き込まれました(;_;)それぞれの思いが交差して絡まって最後は綺麗に解けていく、そんな風に感じました。次のきょもほくの作品もとても楽しみにしています！ (2019年2月2日 21時) (レス) id: 3d9da8fdcf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さいか
| 作成日時：2019年1月25日 20時
