（40-��.） ページ10
この扉を開ければ、大我が待っている。
大我だけじゃない。
自分の、そして京本家の親族も大勢集まっていることだろう。
その様子を思い浮かべるだけで、Aを泣きたくなるほどの緊張感が襲う。
｢大我様、待ってますよ｣
｢…わかってる｣
ジェシーに促され、心の準備もそこそこにAは思い切って扉を開けた。
｢…あれ?｣
目の前に広がった光景は、Aの想像とは、少し違っていた。
レッドカーペットの先には大我がいるが、その脇には列席者が誰ひとりいなかった。
｢大我様が、おふたりだけの式にしたいからって…｣
戸惑うAの耳元でジェシーが状況を説明し、ようやくAはこの異様な光景を無理矢理だが理解した。
少し複雑な気持ちのまま、Aはレッドカーペットを歩き、大我に1歩ずつ近づく。
大我はその様子を愛おしそうに見つめていた。
ふたりがようやく向かい合った時、Aは神父もいないことに気がついた。
つまりそれは、式を進めることもできないということだ。
｢…あの、大我?｣
｢さようなら、君は私が所有するには高貴過ぎるし、君も自分の価値を先刻承知のことだろう｣
｢…え?｣
大我が口にした詩を、Aは知っていた。
｢君は自由の身となるだけの特権を持っているし、君への私の債権もすっかり期限が切れている｣
大我は少し芝居っぽくその台詞を言い続けた。
｢私にはこの立派な贈り物を受ける理由もない、
だから、私の特権は返上することにしよう｣
｢シェイクスピアのソネット集、束の間の…夢｣
｢そう。Aが好きだって聞いてから、覚えたんだ｣
大我はいつもと何ら変わりない笑顔でそう言った。
しかし、Aは同じように笑顔にはなれず、大我の言動に戸惑うことしかできない。
｢ねえ、どうゆうこと?｣
｢A!!!｣
Aが口を開くのと同じくらいに、教会の扉も勢いよく開け放たれ、Aの名前を叫ぶ人影が現れた。
｢……樹!!｣
その光景を、大我も、ジェシーも、満足そうな顔で眺めていた。
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さいか(プロフ) - リリーさん» コメントありがとうございます！最後まで楽しんで頂けたなら、本当によかったです！ぜひぜひ、次回作も楽しみに待っていてください！ (2019年2月3日 0時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - なるみやさん» コメントありがとうございます！お褒めの言葉とても嬉しいです！最後まで書いてよかったと思えました。ぜひ、次のきょもほくもよろしくお願いします！ (2019年2月3日 0時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 完結お疲れ様です！今回も素敵な作品で最後まで物語の世界へ引き込まれていきました。何度も読み返したくなるような…。次回作も期待してます！ (2019年2月2日 22時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
なるみや(プロフ) - はじめまして。完結おめでとうございます！とても言葉のチョイスが素敵で惹き込まれました(;_;)それぞれの思いが交差して絡まって最後は綺麗に解けていく、そんな風に感じました。次のきょもほくの作品もとても楽しみにしています！ (2019年2月2日 21時) (レス) id: 3d9da8fdcf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さいか
| 作成日時：2019年1月25日 20時
