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翌朝、先に目覚めたのはAだった。
まだ朝日が昇り間もないせいで、あたりは薄暗い。
Aは隣でだらしなく口を開けて寝ている樹をしばらく愛おしそうに見つめた後、樹を起こさないようにそっと身を起こす。
少し動くだけで痛む腰を擦りながら、Aは身支度を始めようと布団から抜け出そうとした。
しかし、いつの間にか目を覚ました樹がAの腰あたりを抱きつき、それを制した。
｢…おはよ｣
｢おはよ…樹｣
樹はまるで大型犬のようにAの背中にしがみつき、離す気配がない。
｢樹、そろそろ離してほしい｣
｢…やだ｣
｢子どもか｣
Aは今まで見せたことのない樹の子どもっぽい一面に、思わずクスッと笑ってしまった。
しかし、そんな呑気なことを言っている場合ではなく、本当にそろそろ帰らないとまずいのだ。
大我のことだから、Aが一晩帰ってこなかっただけで警察沙汰にしかねない。
｢樹、本当にそろそろ…｣
｢…｣
｢…樹、お願い｣
Aはまるで子どもを叱るお母さんのような顔をして樹を説得した。
渋々手を離した樹は、不貞腐れたかのように再びベッドに横になり、寝たフリをしてAの気を引こうとする。
しかしAは樹の思惑通りになるまいと、無視を貫き通して身支度を着々と進めた。
Aの帰り支度が整っても樹はベッドの上から動こうとはしない。
｢…樹、私帰るよ｣
樹からの返事はない。
Aは仕方なく、とりあえず今日は早く帰ることを優先し、樹の返事を待たずに靴を履き、ドアノブに手をかけた。
そこでやっと樹はベッドから起き上がり、玄関の方へやって来た。
｢本当に帰るの?｣
｢帰らなきゃ、みんな心配してる｣
あえて大我の名前を出さなかったのは、Aなりの気遣いだった。
｢…また、会えるよね｣
｢また迎えに来てよ、こっそり｣
｢わかった。必ず｣
ふたりは触れるだけの優しいキスをして、また会う約束を交わす。
1度触れてしまうと余計、別れづらくなってしまうことは分かっていたが、それでもやはり触れずにはいられなかった。
唇を離すと、Aはこれ以上寂しくならないよう、無言で樹の家を後にした。
樹も追いはしなかった。
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さいか(プロフ) - ちいさん» お褒めの言葉、ほんっとうに嬉しいです(;_;) 最後までどうぞよろしくお願いします！！！ (2019年1月25日 20時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます！ ぜひ、最後まで楽しんでください！！ (2019年1月25日 20時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 初めて読んだ瞬間、なんて素晴らしい文章力だろうと感動しました。個人的に大我くんが好きなので、女の子と上手くいって欲しいな…と祈りながらも楽しく読ませて頂きます笑 これからも応援しています。 (2019年1月24日 20時) (レス) id: a3ba396e6d (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 今回の作品もとても楽しみにしています！ (2018年12月21日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年12月20日 23時
