（30-��.） ページ41
樹の目に映るAは、5年前の彼女とは全く違う顔をしていた。
昔のAは、明るくて、なんに対しても強気で、まさにじゃじゃ馬姫だった。
しかし、今の彼女は、全てに絶望し、希望を見出していなかった。
｢樹を失う代わりに得た私の人生…大我との、未来｣
｢大我のこと、嫌い?｣
｢好き…なんだと思う。彼がいないと寂しいし、隣で眠る彼を見ると愛おしい…って思うし｣
｢そっか…｣
｢それにもう、引き返せない｣
その言葉には、Aの確信があった。
｢結婚の話が、多分進んでる。私の知らないところでね｣
それはあくまで『たぶん』であって、つまり、Aの推測でしかない。
しかし、Aにはわかったのだ。
5年間、京本家で過ごした日々の中で、Aなりの勘は鋭いものとなっていた。
｢本人知らないって、ありなのか?｣
樹の素直でごく普通の質問すら、Aにとっては皮肉のように、どこか嫌味のように聞こえた。
それほどAは、自暴自棄になっていた。
｢私の大学進学取消も、入学式の前日に知った。私の成人式の晴れ着もいつの間にか決まってた。その日着る服も、前日の私の知らない間に私のベッドの上に置いてある｣
Aは自然と早口で自分の京本家でどのような存在なのかを樹に伝えた。
自分で言っていて辛く、悲しく、恥ずかしいと思うことを、5年ぶりに会った樹に包み隠さず伝えた。
｢Aは、人形じゃないのにな｣
樹は変な同情はせず、素直に、しかし、Aを認める言葉を口にした。
その言葉はまるで魔法のようで、Aの瞳に光が戻り、そして静かに涙が一筋零れた。
樹は、Aの突然の涙にどうしていいかわからなかった。
｢ごめん、なんか…久しぶりで。私の事、ひとりの人間として…認めてもらったの｣
こんな言葉でさえ涙を流すほど辛かったのだと思うと、樹は5年前のあの日、Aと別れたことを後悔した。
自分がAを守るべきだったと、初めて後悔した。
｢うち、来る?｣
｢…え?｣
そして、もし今またあの日をやり直せるなら、決してAを離してはいけない、と思った。
Aを誰にも渡したくない、自分の手で守ってやりたい…そんな思いが、樹の恋心に再び火をつけた。
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さいか(プロフ) - ちいさん» お褒めの言葉、ほんっとうに嬉しいです(;_;) 最後までどうぞよろしくお願いします！！！ (2019年1月25日 20時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます！ ぜひ、最後まで楽しんでください！！ (2019年1月25日 20時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 初めて読んだ瞬間、なんて素晴らしい文章力だろうと感動しました。個人的に大我くんが好きなので、女の子と上手くいって欲しいな…と祈りながらも楽しく読ませて頂きます笑 これからも応援しています。 (2019年1月24日 20時) (レス) id: a3ba396e6d (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 今回の作品もとても楽しみにしています！ (2018年12月21日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年12月20日 23時
