-第3章- （28-��.） ページ37
28.
.
6月中旬、湿気も多く徐々に近づく夏を感じさせる日差しが樹を照りつけていた。
雑踏の中に紛れ込み、なんの意味もなく歩く樹は日曜なんかに外に出たことを後悔した。
｢…帰ろ……｣
本当は買い物をする予定だったが、あまりの人の多さに断念することを決めた樹は踵を返した。
｢っあ！｣
人混みの中で急に進路を変えたせいで、樹は見事に人とぶつかり、しかも、細身の樹のほうが倒れ込んだ。
｢…ごめんなさい、大丈夫?｣
｢いや、こちらこそすみません…｣
差し出された手を見上げると同時に、相手と目が合った。
｢…え、樹?｣
｢…北斗?｣
樹と北斗、ふたりは奇跡的な再会を果たした。
最後に会った18歳の頃から5年ぶりの再会、ふたりは既に23歳の大人になっていた。
｢いやー、ひさしぶりだね。何年ぶり?｣
｢…5年ぶり、とかじゃない?｣
｢そっか、今もう23だもんね…歳とったなぁ｣
｢北斗なんか、色気?…が、出てる｣
｢え、そう?なんか照れるな。樹は…ごめん、変わらないや｣
｢ははは、そりゃどーも｣
人混みの中で立ち話はできなかったので、ふたりはあめいずに行き、再会を喜び合う。
樹の目に映る北斗は、5年前より大人びていて、同い歳とは思えない色気が溢れ出ていた。
それに対し、樹は見た目も声も性格も、何一つ変わっていなかった。
｢樹、今何してるの?｣
｢あめいずの店長の知り合いの店で働いてる｣
｢そっか、順調?｣
｢まぁまぁかな。男ひとり暮らしはなんとか生きていけるくらい｣
｢へぇー、まだ独身か｣
｢そうゆう北斗は?執事として出世とかしたの?｣
樹の在り来りな質問に、北斗は若干目を伏せた。
｢…俺、実は、今…執事やってなくて｣
｢え?…辞めたの…?｣
北斗の言葉に樹は驚きを隠せなかった。
｢いや、正確には辞めてない。長期休暇…的な。それももう、4年ほど｣
あの北斗が執事という職からそんなに離れているということは、余程の理由があるのだろう…と、樹はどこまで探りを入れていいのかがわからなくなった。
｢理由とか…聞いていい?｣
｢いいけど、樹も少し辛いかも｣
｢…いいよ｣
｢あの後…あ、樹とその…お嬢が、別れた後ね、お嬢は京本家で暮らすことになったんだけど、俺もついて行ったの。お嬢専属執事としてね｣
そうやって話す北斗の表情は誇らしげだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 303人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さいか(プロフ) - ちいさん» お褒めの言葉、ほんっとうに嬉しいです(;_;) 最後までどうぞよろしくお願いします！！！ (2019年1月25日 20時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます！ ぜひ、最後まで楽しんでください！！ (2019年1月25日 20時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 初めて読んだ瞬間、なんて素晴らしい文章力だろうと感動しました。個人的に大我くんが好きなので、女の子と上手くいって欲しいな…と祈りながらも楽しく読ませて頂きます笑 これからも応援しています。 (2019年1月24日 20時) (レス) id: a3ba396e6d (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 今回の作品もとても楽しみにしています！ (2018年12月21日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さいか
| 作成日時：2018年12月20日 23時
