（24-��.） ページ31
｢私、難しいこととか分かんないから…直感で、思ったままに生きてる。3年前もそう。樹のそばにいたいから、樹のそばにいた｣
｢そっか…｣
｢樹｣
｢なに?｣
｢私たち、変わらないよね?｣
Aは切実な瞳で樹を見つめた。
しかし、樹にその真意を掴み取る事はできなかった…いや、できていたが、できなかったふりをした。
その答えを樹は出すことができないから…だしたらそれは、ふたりを縛り付けてしまいそうだと感じたのだ。
｢なにそれ｣
｢…わかんない｣
｢なんだよ｣
そうやってふたりは、乾いた笑い声で寂しく笑い合い、ふと時計を見上げた。
｢そろそろ、帰らなきゃ｣
｢そうだな｣
そう言って名残惜しそうな感じもなく、樹は立ち上がる。
Aもつられて思い切り立ち上がった。
するとその時、Aの視界が揺らいだ。
それは単なる立ちくらみだったが、突然のことにAはバランスを崩し、その場に倒れ込みそうになる。
樹は咄嗟にAを支え、結果としてそれは、Aを抱きしめる形となってしまった。
Aが落ち着いても、樹はAを話そうとはせず、むしろ強くAを抱きしめるばかりだ。
｢あの、樹…?｣
Aが呼びかけても、樹は何も答えない。
Aはただただ樹の胸から伝わる鼓動を黙って聞くしかなかった。
その時間は、長いようにも短いようにも感じる不思議な時間だった。
Aは樹が今どんな顔をしているのか、見たくてたまらなくなり、少し上を見上げた。
しかし、自分の首筋に顔をうずめている樹の顔は見ることはできず渋々諦める。
｢樹、息が、くすぐったい｣
Aがそう言うと樹はゆっくりと顔を浮かせ、そして、Aを抱きしめていた腕も緩めた。
Aの肩に手を添えながら体を離した樹の顔は、Aの瞳にひどく悲しげに映った。
｢樹…｣
Aは思わず樹の名を呼んだ。
そうしないと、樹が消えてしまいそうだと感じた。
｢…ごめん｣
樹は小さくそう呟くと、Aの言葉を待たずにAの唇をふさいだ。
ちょっとだけ触れる感じの優しいキスは、Aと樹の時間を止めた。
しかし、先に我に返ったのはAの方で、樹から飛び退くように離れると何も言わずに教室を飛び出した。
1人残された樹は、自分の唇に手を当て、まるでまだ夢の中にいるかのような顔で立ち尽くす。
Aはそんなことをする余裕もなく、顔を真っ赤にしながら校舎を駆け抜けた。
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さいか(プロフ) - ちいさん» お褒めの言葉、ほんっとうに嬉しいです(;_;) 最後までどうぞよろしくお願いします！！！ (2019年1月25日 20時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます！ ぜひ、最後まで楽しんでください！！ (2019年1月25日 20時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 初めて読んだ瞬間、なんて素晴らしい文章力だろうと感動しました。個人的に大我くんが好きなので、女の子と上手くいって欲しいな…と祈りながらも楽しく読ませて頂きます笑 これからも応援しています。 (2019年1月24日 20時) (レス) id: a3ba396e6d (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 今回の作品もとても楽しみにしています！ (2018年12月21日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年12月20日 23時
