私と彼の特等席 【JM】

ナムジュンの話 ページ43

あくまで念のためにだけど、最初に断っておこう。





俺は別にAのことが好きではない。


恋愛的な意味で。




そんなことを思ってる人がどれほどいるかは知らないが、あくまで念のため。



そう、俺はAに恋をしているわけではないし、そういう対象に見たこともない。




確かにホソガと地味にモテるAに近寄る男共に牽制はしていたが




断じて俺はAを好きではない。



Aは親友以上家族未満…みたいな。身内に変な輩が近付くのは嫌だろう？







まあこんなことを考えるためにわざわざAのバイト先の喫茶店に居座っているんじゃないんだ。




今の俺にとって最大の悩みどころは





……これを周りの人に信じてもらえないってことだ。







なぜだ！？



なぜ俺がAを好きだと思うんだ！？


ホソガとずっと一緒にいるからか！？





俺は覚えているぞ…



あの先輩…ユンギって名前だったかな



あの人が俺を



あぁ…こいつも失恋したのか…



という哀れみのこもった目で見てきたことを！





あとジミン？くんだっけ？Aの彼氏！



あ、この人もヌナのこと好きなのかな…




さっきボソッとそう言ってたの聞こえてたぞ！







「はぁ……」


一旦落ち着くために、コーヒーを一口すする。





ん、



このコーヒーカップ…いいな…


俺が触っても全然割れる気配がない！





この素晴らしいコーヒーカップに敬意を払いながら机に戻し、また考える。





大体Aは全く俺のタイプではない。


かといってミヨンみたいにクールビューティな感じでもなくて…





なんというかこう…



綺麗な長い黒髪で…



でもショーパンとかスニーカーが似合うような…







…カランカランッ



「あ、いらっしゃいませ〜！」






……そうそう、顔もあんな感じの…








…ガチャッ



「うおっ、」




パリーンッッ





「あぁぁ……」




お店に入ってきた女の人に見惚れていると不意に動かした腕にコーヒーのカップが当たり



急いでキャッチしようとしたけど、その手がかすることなく、カップは無惨な姿になってしまった。








「ちょっとナムジュナ！？この破壊神！」





「……A〜〜…」



Aの声に顔をあげると、箒とちりとりを持って走ってくるAと…さっきの女の人がこっちを見ているのが見えた。







目に飛び込んでくる赤いコンバースハイ。








……好きだなぁ。

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