私と彼の特等席 【JM】

乙女なジミンの話 ページ40

「……これ学校間に合うのかな…」


腕時計を見ながら何度目ともわからないため息。



あぁぁ…高校入ってからは寝坊しない、って決めてたのになぁ…


こんな早々に寝坊しちゃうなんて…ツいてないや。





なんであのバスあのタイミングでドア閉めるんだよ！


運転手さん絶対僕が走ってたの見えてたのに！







……キキーッ



「…あ、やっと来たぁ〜」



急いで乗り込んで、とりあえず空いてる席に座る。





……ん？





無事座れたはいいものの、ふと、隣の女子高生が僕のことを凝視している気がして



気になって隣を向いたら、普通に本を読んでいたけど





……本逆さまだ…




絶対この人僕のこと見てたよね…






目もすっごい泳いでて、ヤバイヤバイとかぶつぶつ呟いてるし、



でもなんかたまに口元デレデレしてるし。




それを必死に抑えようとしてる姿がすごくかわいく見えて、思わずクスッと笑ってしまった。






……んん？



「あ、あれ…？」



すると心臓が急にバクバクしてきて、



胸を抑えてみるけど全然止まらない。



「？？？？」




ど、どうしたんだろ…



心なしか顔も熱い気が…



しかもなんだ…この左側に全神経が集中する感覚は…！







試しにもう一度その人の方を見てみると





「っ、！！」




さらにあり得ないくらい心臓がバクバクしてくる。









……もしかしてこれは







一目惚れってやつ？






い、いやいやいや！初めて会った人だぞ！？



喋ってもないぞ！？見ただけだぞ！？




……いや、それを一目惚れって言うのか。





いやいやだから！そんな簡単に…









…三度目の正直。




ちらっと横目で隣の人を見ると。






ぐりぐりぐりぐりぐり






口の周りを両手でひたすらぐりぐりしてた。








きゅーんっ






何この人…かわいい…！……すきっ！！







………ハッ！！





ぼ…僕、今好きって…



こ…これは…認めるしかないようだ…







お父さんお母さん。






僕は高校一年生になりついに一目惚れを経験した模様です。



ど、どうしよ！こういう時ってどうすればいいの！？



あぁぁぁぁぁ！落ち着け僕の心！！






でも、果たしていいのか悪いのか



ちょうど降りるバス停にバスが止まって、やっと僕はパーリー状態の心から解放された。









明日から毎日座るだろうこの席をゆっくりと立つ。






車窓から見えた樹には、遅咲きの桜が風に揺れていた。

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