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「久しぶり………。」
和也「………全部、聞こえてた。昨日のこと……。」
「うん……。」
でもそれも、忘れちゃうの?
和也「だから、もう…戻れそうな気がする………。」
告白した頃の強気な声とは違う
初めて会った頃と同じ
優しくて 控えめな声
そんな優しく笑わないで、と
心の片隅で思う私は汚い
お姉ちゃんの言う通り
目覚めた彼が何も覚えていなかったとしたら
いつか危険なんてレッテルはすぐにでも剥がれて
また穏やかに優しく笑って
今度はきっと
私じゃない 誰かを好きになるかもしれないのに
・
その度に
誰も知らないまま
2人だけで
この場所で過ごした時間が
戻ってこればいいのにと
一番残酷なことを思ってしまうんだ。
・
「私のこと、忘れちゃうかな……。」
こらえきれなくて
心の声が そのまま漏れる。
それにハッとなって
ありったけの精神力で
マイナスに行きそうだった思考を
無理矢理プラスに方向転換する
和也「え……?」
「あっ、そのっ!お姉ちゃんに聞いたの!二宮君が生き返ったら今までのこと忘れちゃうかもしれないって!でもっそれでも……。」
言葉が 詰まる。
何言ってんだろ私
忘れるなら何を言ったって
自分が辛くなるだけなのに
「それでも………。」
どうか、涙よ
こぼれないで。
「わたし、は……覚えてるから……。」
短い間だったけど
せめて最後は綺麗な心を演じられるカノジョでいたい。
「二宮君が何も覚えていなくても………
また、勇気を出して好きだって伝えるから………。」
その時は
触れ合えて
野球も観に行けて
一緒にゲームもできて
ハンバーガーも食べられる
そんな2人になれますように
そう 伝えたくて
でも忘れられるのが怖くて
どっちつかずの情けない口に
ふわ、と風が吹いて
気付けば
うっすら色が白くなった
二宮君の切なそうな表情が目の前にあった。
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作者名：千也 | 作成日時：2016年6月12日 19時
