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拓弥くんはサーフボードをもう一度きちんとバイクにくくりつけた。
だから、私もギターをギターケースにしまうと彼のバイクにそっと立て掛けた。
拓弥くんが一緒にベンチに座れるように……。
拓弥くんが自動販売機でペットボトルを買っている間、ベンチに座ったまま真っ直ぐ前を見ると、彼のサーフボードと私のギターが寄り添ってとても似合いに思えてきた。
そう思ったら、余計にドキドキしてきて、その鼓動が彼に聞こえているのではないかと心配になってきた。
聞こえないように身体を小さくしてみる。
彼の足音が近づいてくる。
一旦、ベンチの横に立って、ごくりとペットボトルから飲むと、自然にベンチに腰掛けた。
耳に響く鼓動が大きく過ぎて耳鳴りがしてきて、胸は破裂するかと思ったくらいだ。
黙ったままいる拓弥くんをちらっと横から覗き見た。
拓弥くんって窓から見ていたより色が黒いんだ。
拓弥くんの肩って広いんだ。
拓弥くんって……。
「この辺に住んでんの？」と突然、拓弥がAの方を向いて訊いてきた。
Aは慌てて視線を逸らせると、それから家を見上げて指を差しながら答えた。
「あの、高台の家」
「えっ、あそこ！？」とかなり驚いた様子で、拓弥も指を差して確認する。
「なんだ。じゃあ毎日通ってるよ、この道」
「うん。知ってる」
「えっ？知ってんの？あ、いつも見てたって、あそこから？」
「そう」
「何か恥ずかしいなあ。変なことできないね」
二人は照れ笑いを浮かべたまま黙って並んで座っていた。
拓弥はAが恥ずかしそうに膝の上で両手を握ったまま、真っ直ぐに前を見ている横顔を眺めていた。
月の光に照らされたAの横顔は透き通るような感じだった。
かわいい娘だな……、妙な出会いだったけど。
拓弥はこのままずっとAを見ていたいと思っていた。
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作者名：MaRU | 作成日時：2018年3月20日 22時
