A Song to the Sun. 1 (ページ32)

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第四章嬉しい約束ページ32

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今日も朝から陽射しが強い。

サーファーたちが海にぷかぷか浮かんで波を待っている。

拓弥があまりにしょぼい波に乗ろうと必死にトライを続けている。

波と呼ぶにはいささか厳しいものがある。

にもかかわらず、何度も何度もパドリングを繰り返しては、へっぴり腰で立つことさえできずにいる。

先に上がっていた海(かい)と祐基が防波堤に座って、にやにやしながら拓弥が漂う海を見つめている。

三人は同じ高校に通っている。

天気のいい日には、朝必ずサーフィンをしてから学校へ一緒にバイク登校する。

何をするにもいつも一緒の仲間だ。

「あそこまでうまくならないヤツも珍しいよな」と、海(かい)が笑っている。

その視線の先には、当然のことながらヘタクソの拓弥がいる。

「でも好きで好きでしようがないって感じのところが、かわいいよね」

祐基まで、サンローションを肩に塗っていた手を止めて、必死でまだトライしている拓弥を見つめながら言う。

ふと眩しそうに空を見上げた海(かい)が、太陽を指差して祐基に聞いた。

「な、なあ」

「何？」

「太陽。あれ、昇り過ぎじゃない？」

海(かい)に言われて腕時計を見た祐基が悲鳴を上げた。

「お、おい、十時！」

「うそ！」

二人は顔を見合わせて慌てて立ち上がると、海(かい)は拓弥に向かって叫んだ。

「拓弥！早く上がれ！早く！」

拓弥は二人の方を向くが気にも留めていない様子だ。

「おまえ、遅刻だよ！」

海(かい)は「早く上がれ」ともう一度大声で叫んでみるが、相変わらず拓弥は「何？」とボードに両腕を載せて海に浮かんだままの体勢で気持ちよさそうにしている。

さすがに突然制服に着替え始めた祐基を見て、やっと拓弥には状況が理解できたようだ。

ところが、ただでさえうまくできないパドリングであるのに、あせってしまっていてはなかなか砂浜まで辿り着けない。

やっとのことで砂浜に上がった拓弥は、急いでウエットスーツを脱いで制服を着た。

拓弥は開襟シャツのボタンを留めないままバイクに跨り、すぐさまエンジンをかけた。

海岸線の一本道をサーフボードを積んだ三台のバイクが走っている。

ばたばたと白いシャツをなびかせて……。

暑い夏はこれから始まるのだ。

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