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数時間後、駅前から続く商店街の通りはたくさんの人でごった返していた。
その通りは土産物屋がずらりと並んだ有名な観光スポットのため、普段からかなりの賑わいなのだが、観光シーズンの週末ともなると都心の通勤ラッシュ並みだ。
古いこの町らしく、ショーウィンドウに重厚な木彫りの工芸品が並ぶ店を何店も見かける。
古風な造りの甘味処や喫茶店も街の雰囲気を損なわないようにされているらしい。
大勢の観光客が、あれこれと土産を買い求めながら散策を楽しんでいる。
通りの入り口近くからは、家々の間を縫って、緑色のローカル電車が海へと向かって走っている。
ゆったりと走る電車の車窓は素晴らしく、観光客だけでなく、地元の人からも愛されているのは言うまでもない。
その理由は、百年以上も続く今も、昔と変わらない景色にあるのかもしれない。
一方、通りを抜けると、緑豊かな中に建つ大きな神社にぶつかる。
この神社は由緒ある神社で、町のシンボルでもある。
四季折々の伝統行事や景色を楽しむ人たちが多く訪れる名所だ。
海辺の町が夕焼けに染まる頃、商店街の通りがだんだんと落ち着きを取り戻し、反対に駅前には、土産物を抱えた多くの観光客が帰りの切符を求めて並ぶ。
そうして人々が帰り支度を始め、陽が沈むと、Aは目覚めるのである。
Aはタオル地の掛け布団をすっぽり頭まで被ったまま、スースーと寝息をたてながら、気持ちよさそうに眠り込んでいる。
突然、ピピピと目覚まし時計の電子音が枕元で鳴り出した。
Aは、反射的に右手でスイッチを叩くように押して止めた。
「あーあ、もう起きる時間か」
Aは布団に入ったまま、両手で伸びをしながらぼやいた。
そして、ゆっくりと布団から這い出てすぐに窓辺に近づくと、フィルムが貼ってある窓を全開にした。
Aの長い髪が風に揺れ、夏とはいえ少しひんやりとした空気が細い腕を包んでいる。
毎日こうして、思いっきり外の空気を吸い込むと、Aの身体はいつも元気に始動するのだ。
「気持ちいい。よし、今日もお天気だ」
Aは真上に広がる星空を見上げてにっこりすると、窓から顔を出してもう一度、外の空気を全身で深く吸い込んだ。
静かな夜がAを迎えにきている。
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作者名：MaRU | 作成日時：2018年3月20日 22時
