A Song to the Sun. 1 (ページ26)

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混雑した大学病院のロビーはいろいろな人が忙しそうに行ったり来たりしている。

Aの父親の謙は、長椅子に浅く腰掛け、由紀の診察が終わるのを待っていた。

正確に言えば、Aの診察なのだが、本人がいないから診察も何もできないでいる。

診察のたびに謙は心臓が締め付けられる思いがしていた。

まだ大丈夫だろうか、もうだめなんじゃないか、いやきっと今回こそは治療法が見つかっていると、あれこれ考えてしまうのである。

そうして、いつもロビーで待っているのだ。

そのとき、ロビーを車椅子に乗せられ、俯いた女の子が横切ろうとしていた。

帽子を目深にかぶり、サングラスをかけ、他の人にはXPだとすぐにわからないかもしれないが謙にはわかってしまう。

その女の子はXPの神経症も患っているようで、左腕が不自然な方向に折れ曲がり、手の甲は爛れている。

「…………」

愕然として、謙はすぐにその女の子から視線を逸らそうとするがどうしてもそうすることができないでいる。

真横を通り過ぎる瞬間、謙は目を伏せた。

そして車椅子の音が遠ざかると天井を仰いだ。

胸が痛い……。

目の前に現実を突きつけられ、ついAの姿と重ねてしまったからだ。

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