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_第5話_ ページ5

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 「……っは!ハァ……ハァ……」
 「嫌な夢でも見たの?」



 ここは……?
 センリツ? 飛行船か……。
 そうか、やはりあれは夢か……。
 タチの悪い夢だ。



 「私はどれくらい寝ていた?」
 「まだ10分も経っていないわ」
 「そうか。すまないが、気分転換に船内を歩いてくる」
 「えぇ、わかったわ」



 本当に、妙にリアルな夢だったな。
 はっ……オレが団員ではないが仲間で、蜘蛛を家族のように慕っていただと?
 アホらしい。


 オレはトイレに来て顔を洗う。
 前の髪から水が滴っているが、拭く気も起きず、眼を赤くさせそのまま鏡越しのオレを見る。


 緋の眼になる。オレは間違いなくクルタ族だ。
 夢の中のオレはクルタ族ではなかったな……。


 だが名前も容姿もそのままだった。
 夢は案外すぐに忘れるものなのに、あの場にいた旅団員全員の顔、名前、パクノダに撃ち込まれた記憶までもハッキリと覚えている。


 念能力まで覚えているから、もしあれが本当なら……戦闘になった時の対策は立てやすい。
 だが……。


 撃ち込まれた記憶の中に、オレが知ってる蜘蛛の冷徹さはなかった。
 いや、ありはした。だがオレが思ってるような感じではなかった。
 盗みをしなければ生きていけない環境だったから盗みをした。
 揉めればすぐ生かすか殺すか問題にしていたが、止めれば辞めてくれた。
 子供のオレでも意見を聞いてくれた。
 流星街の報復も、仲間思いが強すぎる故だ。

 撃ち込まれた記憶の中のクルタ族は、悪いことはしてないと思う。
 寧ろ助けようとしていた。
 だが勘違いしてしまうのも仕方がない。
 世界から疎まれているのだから、流星街出身者以外を敵としか見れなかったのだ。


 そう、仕方ない……。



 「……ッ、だからなんでオレは!」



 なんでオレは、蜘蛛は悪くないなどと考えているのだ!
 蜘蛛は同胞を殺した。オレが必ず、この手で葬ってやる!



 “クラピカ”



 蜘蛛のリーダーの声が脳内で響く。


 黙れ。



 “よぉクラピカ!”



 戦い、殺した奴の声がオレを呼ぶ。


 黙れ。



 「クラピカ!」
 「黙れ!」



 オレを呼ぶ声を追い出そうと頭を抱えるが、視界の端にセンリツを捉えると、視界はフッと暗闇に覆われた。


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ジユウジン(プロフ) - 雲英〜キラ〜さん» 心の中の一人称は「オレ」らしいのでそうしたのですが、やっぱり「私」の方がクラピカって感じしますよね…。主視点クラピカだとどうしても「オレ」ばかりになってしまうので、もし心の中の一人称も「私」に変更した方が良ければもう一度コメントお願い致します (2020年2月13日 0時) (レス) id: 9a91ee94b5 (このIDを非表示/違反報告)
雲英〜キラ〜(プロフ) - クラピカの一人称は私じゃないですか? (2020年2月12日 23時) (レス) id: ed9f823896 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ジユウジン | 作成日時:2020年2月6日 17時

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