＿第25話＿ ページ25
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「アベルさんは……いい人なんじゃ、ないの？」
「は？笑かすなよ」
「だって、グレイスさんが許せないって……同族を守るためにって……」
アベルさんから目を離すことができない。
彼や彼の仲間が今どこを向いているのかも認識できない。
「嘘に決まってんだろ？グレイスに服従させるフリ装って、俺に服従させる。服従したお前が魔王になって俺のためだけに力を使わせる。
一日だけで調教はさすがに無理があるかなら。それならいい人に見せかけて信頼させ、頼れるのは俺だけだと刷り込ませ、後から少しずつ調教していった方がいいって判断しただけさ」
アベルさんの口元は弧を描いていた。
なんで……。
私、ずっと騙されてたの？
なんで、なんで私……。
アベルさんはその間もドンドン近づいてくる。
リーチの届く距離にまで近づくと、鈍器を振り上げた。
避けなきゃ。逃げなきゃ。
分かってはいるが、体が動かない。
殴られる！
目をギュッと瞑ったが衝撃はこず、カランと鈍器が床に落ちた音が響いた。
恐る恐る目を開けてみると、目の前が金色に染まっている。
彼だ。
「俺の女に手荒な真似しないでくれるかな」
「あ？」
「相手なら、俺がしてあげるよ」
彼はチラリと私の方を見ると、スルッと私の腕に一瞬触れた。
立ち上がった彼の体が、ひどく大きく感じる。
「A、動けるなら端にいて」
そう言われても未だに力が入らない。
なんとかして力を入れようとしている間に、彼とアベルさんの戦闘が始まっていた。
でも私には何も見えなかった。一瞬止まったその瞬間だけギリギリ目で追える程度だ。
念が使えるかどうかでこんなにも差があるの……？
私には、見ることもできない。どっちが優勢かも、わからない。
あぁ、どうして私はこんなにも弱いんだろう。
魔族だから？ 禁忌を知ってるから強くなれない？
……きっと違う。
戦えなくても強くなる方法はきっとたくさんあった。
戦えもしない、サポートすることもできない。
守られるばかりで、何もできない。
愛されるばかりで、何もしてやれない。
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続く
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ジユウジン(プロフ) - みくさん» コメントありがとうございます！長い間更新できておらず申し訳ございません。説明ばかりになってしまって面白くないかもと思っていたので、このコメントはとても励みになります！近々更新いたしますので、もうしばらくお待ちください！ (2020年1月31日 23時) (
レス) id: 9a91ee94b5 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - コメント失礼します！続きが気になります！とっても面白くて、今まで読んだことのない世界観でとても続きが気になります！更新頑張って下さい！ (2020年1月9日 23時) (レス) id: c4c066f43b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ジユウジン | 作成日時：2019年11月16日 15時
