譲らないよ（白）

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複数のテーブルのオーダー表を纏めて厨房に戻る。




ホールにも厨房にも、ラウールくんの姿はない。





まさかと思って、店の奥の1番テーブルの方を覗くと、テーブルの前に跪くラウールくんの姿がそこにあった。







少し遠い所から様子を伺うけど、
どうやらオーダーを取ったりしているわけではないみたい









こりゃ、なんか怪しいぞ












「まじでかっこよすぎるよね、王子様みたい」

「おにーさん、名前なんていうんですかー？」

ラ「…ラウール、です」

「へえ〜、ハーフとかですか？」

ラ「はい…」












ほらー、やっぱりきた。



ラウールくんの左の口角がピクピクと動いているのが全てを物語っている。










「あとでインスタ教えてくださいよ！」

ラ「いや、それは…」

「ずるい！私も！」

ラ「…」






グイグイと来られて言い返せず、
悪い事をしたわけでもないのにペコペコと頭を下げるラウールくん









急いで1番テーブルの元に駆けつけて、
ラウールくんの横に跪く。








A「すみません、お客様。お店の決まりで連絡先の交換は致しかねますので、そこはご了承ください。」







「えー、ショック。」
「交換したかったのに。」








お、案外すんなりと受け入れてくれそう？




　
　





A「では失礼しま、」



下がろうとラウールくんの背中をそっと押したとき、








「そういえば、」





　





今度はなに！










「”あの人”はもう居ないんですか？」

A「あの人、とは…？」

「ほら、あの塩顔イケメンの！」

A「…」












えーっと、












塩顔のイケメンって…













翔太しかいなくない？

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