勇者パーティから追い出されたので移動式料理店はじめます。

護衛騎士 ページ6

「情けない姿をお見せして申し訳ないわ」


「いえ、まさか勇者御一行様だとは......」


「......もう違うのよ」



私を引き取ったのは領主邸で護衛騎士をしているアイトだった
アイトはその美しい顔と細身の身体からは想像もできないような剣技を習得しているらしい
私のことを引き取るにしても危険人物かどうか調べる為に、持物検査をしたみたいだ
その時にステータスカードを見つけて、勇者御一行だけに付けられる特別な"ブレイファ"という証を見られてしまったのだ
ステータスカードとは、その名の通り私の情報が隅から隅まで記載されている身分証のようなものだ
職業はもちろんギルドランクから所属パーティ等.....まさに個人情報の塊
仕方がない、怪しかったんだろうしそれでも家に上げてくれるなんて余程優しい人なのだろう


私は何故かポツポツとこの人に経緯を話してしまった
誰かに聞いて欲しくて、ずっとずっと彷徨い歩いていた
本当に情けない、こんなのが元勇者御一行だなんて



「はぁ......ステータスカード、更新しないとね」


「元勇者御一行様というだけでも、とても素晴らしいですよ。今までお疲れ様でした」


「......ありがとう、身を削って来たけど...これからはゆっくりしようかしら」



アイトにそう言われると、なんだか不思議と落ち着いてしまった
散々泣いて飲んだくれて、すとんと自分の中に収まった
今までは恐怖と一歩間違えれば命を失うようなことばかりだったけど、もう私は勇者御一行ではないのだ
そう考えると、案外いいものではないのかと思い始めた



「お金はあるし、何か始めようかしら」


「何か得意なことを仕事にするのはどうでしょうか？」


「......そうね、魔法以外なら創作料理？」



私はモンスターの肉を上手く料理することが得意だった
私が首を傾げながら言うとアイトは私の肩を掴んで食べたそうにこちらを見つめた
もちろん、こっちは泊まらせてもらった身だから借りは返さないとね
私がアイテムボックスを出すとその魔法にアイトは驚いたように目を見開いた



「これは......伝説の魔法、アイテムボックスじゃないですか！」


「で、伝説って大袈裟じゃない？勇者の洸太も持っていたわ」


「......やっぱり勇者御一行様は凄いですね」


「特殊ダンジョンを初めて攻略した者にはそれに見合う能力が貰えるの、これは秘密よ」



......この話は攻略した人しか知らない、死者が続出しそうだからだ

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