勇者パーティから追い出されたので移動式料理店はじめます。

和解と決裂 ページ45

朝起きると、そこは宿屋のベッドの上だった
酒を飲み始めて暫くしてからの記憶が抜け落ちている、完全に飲み過ぎた
しかし、それとは反対に頭痛も吐き気もない



「......美久亜のおかげ？」



もしかして、治してくれたのかしら
ユリは欠伸をしながら部屋を出ると、隣室から大きな声が聞こえた
耳を澄ますとその声の主は洸太だった
ユリが扉を開けると、涙を浮かべている美久亜が一緒にいた



「何してるの？廊下まで聞こえてきたわよ」


「ユリ......ごめん、本当に。今美久亜から聞いたんだ、あの事件は美久亜がやったことだって......ユリに濡れ衣を着せたと」



ユリの表情は変わらず2人を見つめていた
2人はその表情に責められているように感じ目を逸らした
ユリが溜息を吐くと、美久亜は涙を堪えながら震えている唇を開いた



「ご、めんなさい......」


「......謝っても無駄だ。美久亜はもうパーティにはいらないよ」


「こ、洸太......そんな」


「ユリが入るから。聞いた所によると賢者になったみたいだし......ユリ、これから償わせてほしい」



洸太は涙を堪えられず溢れさせている美久亜に背を向けてユリに微笑みを向けた
ユリは洸太に向かって歩くと、ニコリと笑って答えた
洸太は良い返事が貰えると胸を撫で下ろした



「このクソ野郎」


「いっ......！ユ......ユリ？」



ユリはそのまま勢い良く洸太の頬を叩いた
その勢いで洸太は床に転がり、呆然と頬を抑えながらユリを見上げる
無表情で洸太を見下ろすユリの眼光は苛立ちに満ちていた



「洸太、何も成長してないのね。私を騙した美久亜の方が何倍もマシよ」


「ご、ごめん。ユリ......！でも、キミがいないと俺は______」


「自分のことばかり。貴方はまた同じ過ちを繰り返そうとしてるわ。私と同じように美久亜を追い出そうとしてる」


「ち、違う......俺はユリの為を思って......」



ユリに縋りながら涙を浮かべる洸太に勇者の栄光は微塵も感じられなかった
都合の良い洸太の行動に飽き飽きしたようで、溜息を吐いて足から洸太を振り払うと美久亜の方へ向かった



「まぁ......なんていうのかしら、誠意は伝わってきたわ。私、美久亜の秘めたる闘争心が好きだったの......もう秘めていないけど」


「......私、ユリに嫉妬してたんです。賢者になったら私の立場がなくなることも、洸太のことも......」



美久亜が言葉を詰まらせるとユリは妹を慰めるように優しく頭を撫でた

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