勇者パーティから追い出されたので移動式料理店はじめます。

惨めな美久亜 ページ44

「美久亜、ユリの様子を見に行ってほしいんだけど......」


「......どうして私が？」


「王華も泥酔しているし、俺達は男だからトイレにはいけないし......紅の翼のメンバー達に世話をさせる訳にもいかないよ。頼んだよ、美久亜」



ユリがトイレに駆け込んでから10分程が経過し、私はユリの介抱をする羽目になった
本当に面倒だ、どうにでもなってしまえばいいのに
洸太に加えてあんな男まで手の平の上で踊らされるなんて、油断出来ない人
......それなのに、当の本人は酒に踊らされてる



「うぇ、え......」


「......はぁ、キュア」



私は気分悪そうにトイレに座り込んでいるユリに手を翳すと、黄金色の光が手に纏ってユリを優しく包み込んだ
するとユリの顔色は徐々に戻っていく
不思議そうに顔を上げるユリと目が合った



「全く、昔からそうですよね。少しは加減を覚えて下さい」


「......美久亜」



そう言って私に抱き着いてくるユリの顔を私は必死に引き剥がしそうとするも修道服は汚れていくばかりだった
洗うのが大変なのに......！



「ちょっと、離れて下さい！」


「......私もう洸太のこと、好きじゃないわ......だから、安心してね」


「......貴方が洸太のことを好きかどうかなんて、もう関係ありません」



私だって気が付いている
洸太はユリへの思いに気付いてしまった、私が引き離したせいだろう
自業自得、しかもパーティも上手くいかなくなるなんて
......昔は勇者御一行のパーティについて行こうと必死だったのに、私が自ら壊してしまった



「洸太は、貴方のことが好きなんです......私がどうしようが、もう無駄です」


「よく、わかんないわ......男は星の数程いるわよ、洸太以外に、も......」



ユリは徐々に目を瞑っていき眠ってしまった
酔っ払いの戯言で明日には覚えていないだろうけど、ユリの言葉が引っ掛かっていた
男は星の数ほどいる、それはそうだ
......でも、洸太は1人しかいない
勇者の洸太は1人しかいないんだ



「......ユリなんか嫌い」



私よりずっと大人なユリに反吐が出そうだ
私とは違う、偽りのない自分で勝負することができる
誰にでも好かれて、人望のあるユリに昔から嫉妬ばかりだった
今でも大嫌い、ユリを見ていると私が惨めになる
でも......本当は______



「......馬鹿らし」

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