勇者パーティから追い出されたので移動式料理店はじめます。

紅の翼 ページ16

私達が煙の上がった方を見つめていると人影がゆらゆらと見えた



「ミズサ......！」


「へへ、大丈夫！内蔵めちゃくちゃになったけどフウヒの回復魔法で治っちゃった！」



その言葉通り口端からは血が垂れていたが、もう止血しているようだ
ミズサはそう言ってまた攻撃を続けた
かすり傷にもならない攻撃を、ミズサは全力で魔獣に与え続ける
あんな攻撃を受けたばかりなのに怖がりもしないなんて......



「......相当な精神力ね」



魔獣は標的をミエからミズサに切り替えたようだ
だけど、もう遅いわ
魔法陣を繋げ合わせると、光を帯びて黄金色に輝いた
すると私達の身体もその光を纏うように光った



「......なにこれ」



ミエの落ち着いた声が珍しく驚いているように聞こえる
この魔法は全員のステータスを底上げする魔法だ
詠唱では太刀打ちできないと判断し、効果の高い魔法陣を書いたのだ



「うりゃあああっ！」



ミズサが先程のように魔獣に剣を振り翳すと血飛沫が舞った
ミズサは一瞬ぽかんと口を開けるも、口角を釣り上げて攻撃を続けた
剣を振るう度に血飛沫が上がり、観客はどよめいた
魔獣も先程とは違い悲痛な叫びをあげる
魔獣がミズサに攻撃を仕掛けようとすると、先程の体当たりをミエが盾で受け止めた



「なんだか、凄い......今ならどんな攻撃も受け止められる」


「わ、私も.....全体回復魔法でも使えそうです！」



魔獣は攻撃を防がれ一方的な攻撃を受け続けた
そしてミズサが高く飛び上がり、魔獣の首を切り落としてしまう
魔獣は断末魔の叫びをあげることもなく、ゆらりと地響きのような振動を立てながら倒れて絶命した
ミズサは大量の血飛沫を浴びて全身が真っ赤になりながら、此方に振り向いてピースした



「み、ミズサさあぁん！」


「ミズサ......っ」



2人はそんな様子を気にもせずミズサに抱き着いた
フウヒは余程怖かったのか、涙が溢れていていつもクールなミエの瞳も潤んでいる
そんな3人の姿を見て、私も緩い涙腺が弾けてしまいそうだった



「へへ、あたし達やったんだね」


「す、凄いですっ......凄すぎます！」


「......やったね」


「......ミズサ」



私がそういうとミズサは大きく頷いて息を大きく吸った
そして会場中に全身を使って声を響かせた



「紅の翼、魔道士の女の子募集中でーす！」



その声が響いた瞬間、歓声と賭けに負けた人々の悲痛な叫びが混ざり合い混沌と化した
やるわね、紅の翼......！

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