第254話 なんてやさしい獣 ページ6
駅のロータリーまで移動するや否や、鶴蝶君は私をベンチに座らせ、自販機へ向かった。走って戻ってきた鶴蝶君に差し出されたのは、ペットボトルの紅茶だった。
鶴蝶「喘息には、カフェインが効くって聞いた事がある……飲めるか…?」
咳き込みながら首を縦に振ると、鶴蝶君はペットボトルの蓋を開けて渡してくれた。受け取った紅茶を飲んで、ゆっくり呼吸すると、次第に発作が治まってきて、ようやく呼吸がまともにできる状態まで回復していった。
鶴蝶「大丈夫か?」
『う…うん……少し…楽になった……ありがとう』
鶴蝶「ここまで連れて来といて聞くのはあれだが、1人か?」
『うん……今日は…原宿に用事があって……』
鶴蝶「そうか…………会うのは、あの日以来だな」
『そうだね……元気だった…?』
鶴蝶「あぁ……美玖琉さんは…?」
『元気だよ……って、こんな状態じゃ説得力ないよね』
あははと苦笑いを浮かべると、鶴蝶君は「迎えを呼んだ方がいい。薬じゃないから気休め程度にしかならねぇだろ」と、間隔をあけて私の隣に座った。
『そうだね……マイキーにメールする』
鶴蝶「1人にするのも心配だ。ギリギリまで一緒にいる」
『ありがとう……ごめんね…気を遣わせて』
鶴蝶「いや…オレが好きでやってる事だから気にするな……それに…アイツがここにいたら、きっとオレと同じ事をしたと思う」
『イザナか……会いたいね』
鶴蝶「そうだな」
その時、喧騒で聞こえるはずがないのに、遠くの方からマイキーのバブの排気音が聞こえた気がした。「多分……もうすぐ来ると思う」と告げれば、鶴蝶君は「なら、行くわ」と立ち上がった。
『鶴蝶君……本当にありがとう』
鶴蝶「……お大事に」
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ひめか(プロフ) - 面白くて見てたら更新停止(泣)続きが出てくるのを待ってます! (10月20日 0時) (レス) id: d30a0c4a49 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 久しぶりに読みに来たのですが、完結までの続きを読めるのゆっくり待ってます (2023年2月2日 23時) (レス) @page12 id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
らる - 何回読みな返したか分からないくらい大好きな作品です! (2022年10月23日 21時) (レス) @page12 id: 2d3739eeeb (このIDを非表示/違反報告)
ゆいみ - Twitterの事とかなんにも知らなくて、けどこの作品すごく好きなのでまた見られるようになって嬉しいです! (2022年3月25日 12時) (レス) @page7 id: 4903ed4ef6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セシル | 作成日時:2022年3月21日 20時