第五十四話 あなたの叱りかたがこわい ページ5
商店街を少し東へ歩いた処に、見慣れた車が停車していた。ワタシは少し足を早めて迷う事無く、その車の助手席に乗り込んだ。
車内は嗅ぎ慣れた香水の匂いと、煙草の匂いが入り交じっていた。乗り込んで直ぐ、煙草の煙が漂ってきて、思わず咳き込んでしまう。すると、運転席で煙草を吸っていた彼は目を丸くして、ワタシを見た。
中原「大丈夫か…？」
『うん……平気……煙、吸い込みすぎただけ……』
そう云って、ヘラっと笑ってみせたが、中也は眉を顰めて、未だ吸い始めたばかりであろう長い煙草を備え付けの灰皿に押し当てた。
中也のさり気ない優しさが何だか恥ずかしくて「勿体ない」と云えば、中也から「五月蝿え」と云う言葉が返ってきた。
『今日は疾いんだね』
中原「まァな。何処か行くか？」
『……ううん……中也、疲れてるでしょ？』
中原「別に、疲れちゃいねえよ。何処か行きてえとこあるなら、正直に云え」
『……ワタシ、中也が作る御飯が食べたい』
中原「へえ……何が食べてぇんだ？」
『中也が作るなら何でも善い』
中原「そうか……なぁ、A」
『ん？』
中原「手前……太宰と一緒に居ただろ」
中也の少し掠れた声が車内に響き渡り、不意をつかれたせいか、心臓が飛び跳ねた。
『な…何で……』
中原「手前から太宰の匂いがすんだよ……胸糞悪ぃ」
『っ……』
中也がそれ以上何かを話す事は無かった。ワタシは靴を脱ぎ捨てて、助手席で三角座りをして、外の景色を眺めた。
夕陽に染まった綺麗な茜色の空が憎たらしい。
何で……折角、久しぶりに二人っきりでゆっくり過ごせると思ったのに……何で、こんな喧嘩みたいな事になってるの……ワタシは目頭が熱くなるのを感じ、自分の膝に顔を埋める。車内には重たい空気が漂い、ワタシの鼻をすする音だけが響き渡った。
中原「………」
第五十五話 エーデルワイスの甘い夢→←第五十三話 たんたんと
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 165人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くまこ - 本当に面白かったです！！中也さんカッコイイです！！ (2016年11月12日 23時) (
レス) id: 015a6a66a8 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - 綾瀬雪さん» 何度も足を運んでいただき光栄です！！中也には溺愛していただきます（笑）今後ともご期待に添えるよう頑張りたいと思います！ (2016年10月30日 0時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬雪 - お久しぶりです。続き読ませていただきました。夢主ちゃん本当に可愛いですね!ワガママだけど根がいい子なのがいいですよね。これからも中也さんに溺愛されてほしい! (2016年10月28日 15時) (レス) id: e4913cbce9 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - 綾瀬雪さん» 本当ですか？良かったです(T_T)小説の話を組み込むのは不安だったのですが、そう言っていただける方がいて下さって本当に嬉しいです\ ♪♪ /これからもよろしくお願い致します (2016年10月15日 17時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬雪 - お返事ありがとうございます。本編より少し幼さの残る夢主ちゃんとってもかわいいです。ワガママ可愛い子大好きなので私の好みどストライクです! (2016年10月15日 14時) (レス) id: 3c086ba796 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：セシル
| 作成日時：2016年10月7日 23時
