第五十二話 真っ白なキャンパスに色をのせる ページ3
今日のワタシは機嫌が善かった。雨が止んで、ワタシの髪の毛のうねりが少しおさまったからなのか、首領に購ってもらった新しいドレスが気に入ったからかなのか、兎に角ワタシは機嫌が善かった。
浮き足立った足取りで廊下を歩いていると、目の前に見慣れた背中を見つけた。とことん機嫌の善いワタシは、その背中に声をかけた。
『太宰さん』
振り返った男は、また新しい処に傷を作っていて、包帯が増えていた。ワタシの姿を捉えた太宰さんは、冷徹な表情から一転、満面の笑みを浮かべた。
太宰「やァ、Aちゃん。今日は、随分と機嫌が善いようだね。そのドレス、凄く善く似合っているよ」
お世辞なのか、本心なのか……太宰さんの言葉の真意は判らなかったが、今のワタシの機嫌を更に善くするには、十分過ぎる言葉だった。
『中也はそんな事云ってくれないよ』
太宰「私と中也を一緒にしないでくれ給え」
『太宰さん、最近忙しそうだよね。中也もだけど、ワタシの相手をしてくれる人が居なくて退屈』
太宰「何だ……中也はこんなかわいい彼女をほったらかしにしてるのかい?可哀想に」
『でしょ?』
太宰「では、そんな可哀想なAちゃんを善い処へ連れて行ってあげよう」
暇を持て余していたワタシは、太宰さんの言葉に目を輝かせた。「何処に?」と興味津々で訊けば、太宰さんは満足げに笑って、「内緒」と云った。
黒の外套を翻して歩く太宰さんの後をワタシは意気揚々とついて行く。太宰さんについてやって来たのは、ある商店街の洋食屋だった。「わぁ」と目を輝かせるワタシに、太宰さんは口元の笑みを濃くした。
この時のワタシを例えるならば、初めて外食を経験した子供の様な歓喜に満ち溢れていただろう。
『太宰さん、此処には佳く来るの?』
太宰「私じゃないよ。織田作の行きつけさ」
『織田作』と云う単語を聞いて、ワタシの胸は高鳴った。
洋食屋に入ると、黄色い前掛け(エプロン)が体になじんでいる愛想の善いおじさんが出迎えてくれた。おじさんは、ワタシの姿を捉えると「こんな洋食屋には、似合わないお嬢ちゃんだな」と笑った。それを訊いた太宰さんは「此の娘は御令嬢だからね」と、ワタシの頭を撫でて、席に座った。ワタシも、太宰さんの隣に座る。太宰さんはおじさんに、織田さんがいつも食べると云う『咖哩飯(カレーライス)』を注文した。「お嬢ちゃんは?」と、おじさんに訊かれ、咄嗟に「ワタシも同じものを」と答えた。
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くまこ - 本当に面白かったです!!中也さんカッコイイです!! (2016年11月12日 23時) (レス) id: 015a6a66a8 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - 綾瀬雪さん» 何度も足を運んでいただき光栄です!!中也には溺愛していただきます(笑)今後ともご期待に添えるよう頑張りたいと思います! (2016年10月30日 0時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬雪 - お久しぶりです。続き読ませていただきました。夢主ちゃん本当に可愛いですね!ワガママだけど根がいい子なのがいいですよね。これからも中也さんに溺愛されてほしい! (2016年10月28日 15時) (レス) id: e4913cbce9 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - 綾瀬雪さん» 本当ですか?良かったです(T_T)小説の話を組み込むのは不安だったのですが、そう言っていただける方がいて下さって本当に嬉しいです\ ♪♪ /これからもよろしくお願い致します (2016年10月15日 17時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬雪 - お返事ありがとうございます。本編より少し幼さの残る夢主ちゃんとってもかわいいです。ワガママ可愛い子大好きなので私の好みどストライクです! (2016年10月15日 14時) (レス) id: 3c086ba796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セシル | 作成日時:2016年10月7日 23時