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第六十一話 見える黒 ページ12

鷗外「内務省のお偉方に胡麻擂りの煩慮とは、宮仕えは気苦労が耐えないねぇ、種田長官」

種田「なんのなんの。政府にいつ叩き潰されるか、溝底でひやひや隠れるような立場に比べれば、これしき」

首領も長官も、軒先で将棋でも指しながら談笑しているかのような表情と声色だ。この二人が本気で対立すれば、三日と待たず、ヨコハマは死屍累々の死都と化すだろう……が、今はそんな事如何でも善い。

『……あのさ、早く本題に入ってくれない?そろそろ我慢の限界。こっちは“態々”こんな処まで来てあげてるの。こんな退屈な会合、さっさと終わらせて甘い物を食べに行きたいの』

ワタシの一言で、場の空気が一気に凍りついた。
ワタシの隣に座る首領だけが、唯一クスクスと笑っていたが、護衛である部下や坂口さん、長官の背後に控える黒い特殊部隊には緊張が走り、長官からは笑顔が消えた。ワタシを睨みつける長官を気にすること無く、ワタシは目の前にある紅茶に口をつける。
……不味い…。

坂口「では、早速ですが本題に入らせて頂きます。異能特務課・種田殿よりポートマフィア・鷗外殿への要求は二点。まず私、安吾について一切の感知をせず、危害を加えぬ事。もうひとつは欧州より日本に不法入国した異能犯罪組織・ミミックを壊滅させること。宜しいですか」

鷗外「一つ目に関しては問題ないよ。私は此でも、安吾君には非常に感謝しているからね。君は優秀で、随分私の仕事を助けてくれた。それが潜入捜査の一環であったにしてもだ。そして、今回こうして君の仲介を以て、特務課との会合が実現した。花束を贈って抱擁したいくらいだよ」

坂口「では…」

鷗外「ただ、二つ目は確約しかねるなぁ。兎に角恐ろしい連中でね。ミミックのせいで、私達の尻にも火がつきっぱなしだ。出来れば泣いて逃げ出したい位だよ」

首領は真意の読めない笑顔で長官を見た。長官の瞳の奥で剃刀のような鋭い光が一瞬、きらめいた。長官は目を閉じ、そして坂口さんに視線を向けて、何やら合図を送った。

坂口「次に、ポートマフィアより特務課への要求は……」

長官は小さく重たい溜息をついた。そして、背広から一葉の黒い封筒を取り出した。

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くまこ - 本当に面白かったです!!中也さんカッコイイです!! (2016年11月12日 23時) (レス) id: 015a6a66a8 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - 綾瀬雪さん» 何度も足を運んでいただき光栄です!!中也には溺愛していただきます(笑)今後ともご期待に添えるよう頑張りたいと思います! (2016年10月30日 0時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬雪 - お久しぶりです。続き読ませていただきました。夢主ちゃん本当に可愛いですね!ワガママだけど根がいい子なのがいいですよね。これからも中也さんに溺愛されてほしい! (2016年10月28日 15時) (レス) id: e4913cbce9 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - 綾瀬雪さん» 本当ですか?良かったです(T_T)小説の話を組み込むのは不安だったのですが、そう言っていただける方がいて下さって本当に嬉しいです\ ♪♪ /これからもよろしくお願い致します (2016年10月15日 17時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬雪 - お返事ありがとうございます。本編より少し幼さの残る夢主ちゃんとってもかわいいです。ワガママ可愛い子大好きなので私の好みどストライクです! (2016年10月15日 14時) (レス) id: 3c086ba796 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セシル | 作成日時:2016年10月7日 23時

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