第五十一話 アングリィ精神 ページ2
ロビーに入ると、ワタシの姿を捉えた警備をしている部下が慌てて挨拶をした。何時もなら、完璧な笑顔で挨拶を返すが、今のワタシにそんな余裕は無かった。
ワタシは足早に昇降機(エレベーター)に乗って、最上階へ向かう。昇降機の中で足を踏み鳴らしながら、最上階に着くのを待った。
昇降機の扉が開くと同時に、ワタシは首領の執務室へ向かった。執務室の前に立つ黒い背広姿の見張りは、ワタシに挨拶はするが、中に入れてはくれない。唯でさえ苛ついているのに、そんな事をされてはワタシの苛立ちに拍車をかけるだけだ。
『通して』
「なりません。幾ら御嬢でも、今は……」
『たかが見張りの分際で、ワタシに楯突くわけ…?』
「い、いえ…そう云う訳では……」
狼狽える見張りを鼻で笑い、ワタシは見張りを無視して、執務室の扉を開けて入った。首領は、いきなり入ってきたワタシを見るや否や「おや」と云う声を洩らし、目を丸くした。ワタシはそんな首領に一直線で向かって、首領の机にバンっと勢いよく手をついた。
鷗外「どうしたんだい、A?」
『御父様に買ってもらったお気に入りのドレスが汚れた……今日の仕事が銃撃戦になるなんて訊いてない!!!』
蓄積された怒りを首領にぶつけていると、ワタシの後ろで「首領」と云う声が訊こえた。その声につられるように振り返れば、そこに居たのは一人の男。
『あっ……織田作だ』
ワタシが男に向かって、指をさしてそう云えば、男は「えっ」と困惑の表情を見せた。ワタシはそんな男に笑みを浮かべる。
『織田作之助さん…でしょ?太宰さんから話は訊いてるよ』
織田「……御嬢に名前を覚えていただけているなんて、光栄です」
律儀に頭を下げる織田さんの手には『銀の託宣』が握られていた。
『銀の託宣』と呼ばれる紙片の所持者の発言は、首領の発言に等しく、紙片を見せて指示すれば、五大幹部以下の人間は断る事ができない。断れば、組織への背信と見做され、処刑される。
まあ、ワタシには関係の無い唯の紙屑同然だが……ワタシは『銀の託宣』を見つめてから、首領へと顔を向ける。
『……ワタシ、お邪魔だったかしら…?』
コテンと首を傾げ、ニッコリ笑って見せれば、「全然だよ」と首領はだらしなく頬を緩ませた。それから首領はワタシの頭を撫でて、織田さんへと向き直った。
鷗外「織田君、善き便りを期待しているよ」
首領の言葉と共に、織田さんはワタシ達に一礼して扉の方へ向かっていった。
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くまこ - 本当に面白かったです!!中也さんカッコイイです!! (2016年11月12日 23時) (レス) id: 015a6a66a8 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - 綾瀬雪さん» 何度も足を運んでいただき光栄です!!中也には溺愛していただきます(笑)今後ともご期待に添えるよう頑張りたいと思います! (2016年10月30日 0時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬雪 - お久しぶりです。続き読ませていただきました。夢主ちゃん本当に可愛いですね!ワガママだけど根がいい子なのがいいですよね。これからも中也さんに溺愛されてほしい! (2016年10月28日 15時) (レス) id: e4913cbce9 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - 綾瀬雪さん» 本当ですか?良かったです(T_T)小説の話を組み込むのは不安だったのですが、そう言っていただける方がいて下さって本当に嬉しいです\ ♪♪ /これからもよろしくお願い致します (2016年10月15日 17時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬雪 - お返事ありがとうございます。本編より少し幼さの残る夢主ちゃんとってもかわいいです。ワガママ可愛い子大好きなので私の好みどストライクです! (2016年10月15日 14時) (レス) id: 3c086ba796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セシル | 作成日時:2016年10月7日 23時