第四十五話 ラポールの果て ページ46
『げっ……』
「あれぇ？Aちゃんじゃない。奇遇だねぇ」
『……ワタシは、アナタなんかとは毛程も会いたくなかったわ。太宰さん』
挨拶替わりに毒を吐き捨てるが、太宰さんはそれをものともせず、ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべたままワタシの手を取り、「私と一緒に心中しないかい？」と云ってきた。ワタシは即座に「厭」と答えて、太宰さんの手を払い除ける。
ああ…最悪だ。何でこんな処で遭遇してしまったのだろう。仕事を終えたのであれば、珈琲屋(ｺｰﾋｰｼｮｯﾌﾟ)なんかに立ち寄らずに、真っ直ぐ帰れば善かった。数分前、「喉が渇いた」と云った自分を呪いたい。
その時、「はぁ？」と云う訊き慣れた声が訊こえてきた。その声を訊いた太宰さんは、ニヤリと笑って、ワタシは頭を抱える。勿論、その声の主は珈琲屋から出て来た中也で、中也はワタシと太宰さんを交互に見た途端、あからさまに眉を顰め、舌打ちを零した。
中原「何で手前が此処に居るんだよ、放浪者(ﾊﾞｶﾎﾞﾝﾄﾞ)」
太宰「偶然だよ、変哲帽子君」
そして始まった二人の云い争い。その云い争いは、どんどん激しさを増していく。此処で乱闘が起きても可笑しくは無い。
だが、中也の手にはワタシが「買ってきて」とお願いした飲み物がある。中也の珈琲が零れるのは、自業自得だから仕方が無いとしても、ワタシの飲み物は別だ。この侭、乱闘にでも持ち込まれたら、ワタシの飲み物が危ない。
ワタシは、咄嗟に中也の腰に抱きついた。ワタシの行動に驚いた中也は、目を見開いてワタシの事を見下ろした。そんな中也の目を真っ直ぐに見つめ、ワタシは口を開く。
『中也、太宰さんなんか相手にするだけ無駄……だから、もう帰ろ』
太宰「Aちゃんは大人だねぇ。そこのちびっこマフィアとは違って」
中原「て…手前……珈琲頭からぶっかけるぞ」
太宰「遣ってみ給えよ。君のその身長で出来るものなら」
な…なんて事してくれたんだ、放浪者。折角、ワタシが丸く収めようとしたって云うのに──。
『っ……もう！！いい加減にしてよ！！ワタシの飲み物を持ったまま喧嘩しないで！！！』
珍しく大声で怒鳴り散らすワタシに、二人は目が点になっていた。ワタシはそんな二人を一瞥し、中也の手にある飲み物を受け取って、帰路へつく。
その後、別に怒っていた訳では無いが、ワタシが怒っていると勘違いした中也が必死に御機嫌取りをしてきたのは、此処だけの話にしておこう。
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瑠李(プロフ) - どころ所敦が淳になっています。 (2018年3月16日 20時) (
レス) id: d8c6f7f40c (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - きな粉もちさん» そんな勿体ないお言葉ありがとうございます！！とても励みになります(T_T)これからもよろしくお願いします！！ (2016年6月19日 0時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
きな粉もち - もう大好きです！他の作品も読ませていただきました。どれもとても面白かったです！続きが気になりますがご自分のペースで更新して頂けたらな、と思っております。無理せず頑張ってください！私も陰ながら応援させて頂きます！ (2016年6月18日 2時) (レス) id: 6d39800d09 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - パティーさん» ありがとうございます(T_T)そう言ってもらえるなんてとても光栄です！今後ともよろしくお願いします！！ (2016年6月9日 16時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 新作おめでとうございます(>ω<)セシルさんの作品＆中也くん大好きなので今後の展開がとても楽しみです!!陰ながら応援しております!! (2016年6月8日 23時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：セシル
| 作成日時：2016年6月8日 17時
