文豪ストレイドッグス あなたを主と決めた日から愛を知った 【中原中也】

第四話 修羅の住む都 ページ5

横浜に戻ってきて直ぐ、ワタシ達にある連絡が入った。それは、中也にとって吉報と云うべきなのだろうか……その話を訊いた途端、ワタシを置き去りにして、獄舎へと向かってしまった。ワタシは、溜息混じりに中也が向かった獄舎へ足を運んだ。

『カーゴメカーゴメ…籠ノ中ノ鳥ハ…イーツイーツ出逢ウ……夜明ケノ晩ニ…鶴ト亀ガ滑ッタ……後ロノ正面ダァレ……』

「き…君は…若しかして……」

中也に首を掴まれ、刃物を向けられている男は、ワタシの顔を見て、一瞬だけ目を見開いた。ワタシは、そんな男を一瞥して、番傘を閉じて笑顔を浮かべる。

『久しぶり……太宰さん』

太宰「矢っ張り、Aちゃんかぁ──いやぁ、元々美人だとは思っていたけど、見違える程綺麗になったねぇ……私と一緒に心中しないかい？」

『キモチワルイ』

太宰「ははっ、随分と嫌われたものだねぇ。昔は、あんなに懐いていたのに──中也より、私の事を好いていただろう？」

太宰さんの言葉が、ワタシの癇に障った。
一発殴りたい……そう思って、カツカツとヒールを鳴らして階段を下りていけば、中也が口を開いた。

中原「おい、A。相手にするんじゃねえ」

『……中也だけ狡い』

中原「手前は其処で大人しくしてろ」

こちらを向かずに云い放つ中也に不貞腐れながらも、ワタシは大人しく従う。閉じた番傘をもう一度開き、階段に腰を下ろした。

太宰「相変わらず……過保護なのか、独占欲が強いのか……あまり縛り過ぎると嫌われるよ？」

中原「……最後に教えろ。態と捕まったのは何故だ。獄舎で何を待っていた」

太宰「………」

中原「だんまりか。いいさ。拷問の娯しみが増えるだけだ」

太宰「……一番は、敦君についてだ」

『敦？』

太宰「君達がご執心の人虎さ。彼の為に70億の章典を懸けた御大尽が誰なのか、知りたくてね」

中原「身を危険に晒してまでか？泣かせる話じゃねぇか……と云いたいが、その結果がこの態じゃあな。麒麟も老いぬれば駑馬に劣るってか？“歴代最年少幹部”さんよ」

太宰「………」

中原「ま、運にも見放されたしな。何せ、俺達が西方の小競り合いを鎮圧して、半年ぶりに帰ったその日に捕縛されるんだからな。俺からしたら幸運だったぜ」

太宰「……くくっ」

中原「何がおかしい」

太宰「いいことを教えよう。明日、“五大幹部会”がある」

太宰さんの言葉にワタシは目を見開き、俯いていた顔を上げた。

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