検索窓
今日:1 hit、昨日:11 hit、合計:217,562 hit

第二十九話 盲目エイロネア ページ30

「気晴らしに如何だい?」と、太宰さんに誘われ、ワタシは太宰さんについて、屋上までやってきた。
太宰さんは手すりに肘をつき、空を見上げるだけで、何も話さない。ワタシは、そんな太宰さんの横に立ち、同じように空を見上げて口を開く。

『いつになったら、ワタシは帰れるの?』

太宰「怪我が治ったらだよ」

『……与謝野さんが、治してあげるって云ってた』

太宰「与謝野先生の治療をAちゃんに受けさせる訳にはいかないよ。あれは、なかなか酷だからね」

『……ねぇ……太宰さん』

太宰「今度は何だい?」

『……中也、今頃何してるかな?』

太宰「……そうだねえ……Aちゃんの事を必死に探していると思うよ。寝る間も惜しんでね……想像しただけで、笑えるけどね」

『……約束破った事……怒ってないかな?』

太宰「約束?」

『……中也の側を離れないって約束……喧嘩の原因は、違うんだけどね……』

そう云えば、太宰さんはいきなり腹を抱えて、笑い出した。ワタシは驚き、目を丸くして太宰さんを見つめる。

太宰「相変わらず、中也は独占欲の塊だね。今頃、中也はAちゃん不足で死んでるかもね」

『……太宰さんは、相変わらず巫山戯てるよね。見てると苛つく』

太宰「酷いなぁ」

『……ねえ……彼の時……如何して“あんな嘘”、中也の前で云ったの?』

太宰「ん?何の事かな?」

『獄舎で会った時──』

“随分嫌われたものだね……昔はあんなに懐いていたのに……中也より私の事が好きだっただろ?”

太宰「あー……Aちゃんは知らないだろうけど、中也は勘違いしているのだよ。中也とAちゃんが出会って間も無い頃、Aちゃんは私に惚れていたってね」

『は?如何して?』

太宰「Aちゃんは、生粋の天然さんなのかな?あの頃のAちゃんの態度を見ていたら、誰だって勘違いすると思うよ──」

第三十話 サムタイムトラベラー→←第二十八話 不幸せなアンサンブル



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (98 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
228人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

瑠李(プロフ) - どころ所敦が淳になっています。 (2018年3月16日 20時) (レス) id: d8c6f7f40c (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - きな粉もちさん» そんな勿体ないお言葉ありがとうございます!!とても励みになります(T_T)これからもよろしくお願いします!! (2016年6月19日 0時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
きな粉もち - もう大好きです!他の作品も読ませていただきました。どれもとても面白かったです!続きが気になりますがご自分のペースで更新して頂けたらな、と思っております。無理せず頑張ってください!私も陰ながら応援させて頂きます! (2016年6月18日 2時) (レス) id: 6d39800d09 (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - パティーさん» ありがとうございます(T_T)そう言ってもらえるなんてとても光栄です!今後ともよろしくお願いします!! (2016年6月9日 16時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 新作おめでとうございます(>ω<)セシルさんの作品&中也くん大好きなので今後の展開がとても楽しみです!!陰ながら応援しております!! (2016年6月8日 23時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:セシル | 作成日時:2016年6月8日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。