第108話 ノーヒットノーアウト ページ9
微動だにしない金造さんに、短気な私は即座に勝呂くんと三輪くんをジト目で睨みつける。「どういことですか」と目で訴えれば、勝呂くんと三輪くんは顔の前で両手を合わせた。
だいたい、いい大人が赤い冷や麦を食べられたぐらいで家出なんかするわけなくない？まあ、それを信じて冷や麦を茹でた私も大概だけど───そんなことを考えていると、空気を読まない志摩くんが金造さんから箸を取り上げて、すくい上げた麺を無理やり金造さんの口に持っていった。志摩くんは、容赦なく金造さんにぐいぐいと押しつける。
志摩「これが食いたかったんやろ？そんで柔兄と喧嘩したんやろ？ほな、さっさと食ってとっとと京都に帰ってや？ネ？金兄の大好きなAさんがわざわざ作ってくれたんやで？ほら、一気にずずーっといったって？な？」
三輪「し、志摩さん。そこらへんでやめたほうが──」
三輪くんが慌てて止めるも、金造さんの鉄拳が弟の志摩くんの頬を穿つ。志摩くんの身体は二メートルほど吹っ飛んだ。金造さんはその場に仁王立ちになると、半ば気絶している志摩くんに凄んだ。
金造「俺がそないケツの穴の小さな男に見えるんか！？アアﾞ！？ゴラ！？Aまで巻き込みよってからに！！」
再び殴りかかりそうなその勢いに、さすがに勝呂くんが止めに入る。
勝呂「やめや、金造。志摩は関係ない。俺と子猫丸で考えたことや」
金造「！？坊が……」
金造さんは驚いたような顔になると、ピンと背筋を正して「すんませんでした！！」と腰をきっかり九十度曲げて謝罪した。
うわぁ……この人…ほんと勝呂くんの前だと態度変わるなぁ……私も人のこと言えないけど。
金造「坊にそないご心配をおかけしとったとは……」
勝呂「ええんや。そんなことより、そろそろ話してくれへんか？どうして、柔造と喧嘩なんかしたんや？お前ら、仲のええ兄弟やないか」
金造「…………それは」
三輪「金造さん」
三輪くんが励ますように金造さんの名を呼べば、金造さんはしばらく逡巡していたが、やがて重たいため息を吐くと、ポツリポツリと語りだした。
第109話 濃淡な脳は単細胞→←第107話 理由なんて僕も知らないよ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 274人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
真涼(プロフ) - part1から楽しみに読ませていただいておりました。再開のお知らせに大喜びしています。pixivさんの方に移行とのことで楽しみに待っております。多忙の中ありがとうございます。無理ない程度に頑張って下さい。 (3月23日 21時) (
レス) @page38 id: c3ea510f0c (このIDを非表示/違反報告)
無名 - この作品凄く大好きです！これからも更新頑張ってください！ (2020年6月22日 0時) (レス) id: 1643c4676a (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 面白いです。これからも頑張ってください (2020年2月21日 16時) (レス) id: 719a0b5f0f (このIDを非表示/違反報告)
セシル(プロフ) - まことのさん» 私なんかの小説で金造さんを好きになっていただけたなんて恐縮です（ ; ; ）ありがたいです。これからもよろしくお願いします (2018年5月1日 23時) (レス) id: 87ed51745e (このIDを非表示/違反報告)
まことの(プロフ) - 初めまして、たまたま見つけて読み始めたところドハマりしてしまい時間を忘れて読み耽り…金造推しになってしまいました(*´д｀*)笑 素敵な作品に出会え幸せです。これからも陰ながら応援しています。 (2018年4月15日 13時) (レス) id: 93323a492e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：セシル
| 作成日時：2017年10月20日 12時
