三通目 ページ3
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食堂へ向かいながら、その生徒＿＿轟焦凍は歌詞の内容にわりと真剣に考えさせられていた。
体育祭の前に彼女が『くっつくぞ！』と言いながら彼の顔を覗き込んだところで、冷ややかな目で『邪魔だ』と言って一蹴しただろう。本当に丸くなったものである。
「けんかをすーるとへーるのかな！！」
「…そういうわけじゃないと思うぞ」
「歌詞違ーう！ハイ、けんかをすーるとへーるのかな！！」
「…けんかをすーるとへーるのかな」
どうしてこの歌を作った人物は、『喧嘩をすると腹が減る』という発想に至ったのだろう。
喧嘩をして殴りあったりして体を動かすと腹が減る、ということだろうか。それともストレス食いか？
「なーかよししててもへーるもんなー！！」
「そうだな」
「歌詞違う！！」
食堂が見えてくる。
喧嘩をしていようと仲良くしていようと、腹は減る。ただ、喧嘩をしている時よりも仲良くしている時の方が、飯は旨く感じるだろう。
轟焦凍はこの歌を作った人物が、早く仲直りできるといい、と思った。いやはや、体育祭前なら微塵も生まれなかったであろう思考である。
「かーあさん！かーあさん！おーなかとせーなかが！
くっつくぞ！」
「かーあさん、かーあさん、おーなかとせーなかが
くっつくぞ」
腹と背中がくっつくってどういう状況だ。相当ペラペラな…それこそ『紙』とかの個性の人間じゃねえと腹と背中はくっつかねえよな。いや、それ消化器官とか大丈夫なのか？「くっつく」ってことになるのか？
いや、まだ「くっつくぞ」という比喩の状態だから未遂か。
そういえば、そんな個性のヒーローもいた気がする。もしかしてそのヒーローが作った歌だったりするのだろうか。そのわりには随分語彙力と知識のねえ歌だな。
轟焦凍がしばらく腹と背中がくっつくとはどういうことなのか考えていると、彼女が彼の手を両手で掴んだ。
「お」
「ありがとう！楽しかった！！最後まで私とこの歌歌ってくれたの、あなたで２人目！！」
「そうか」
そういや誰だこいつ。と、今更すぎる疑問が浮かんだ。同級生であることくらいしか分からない。
ていうか、この歌をコイツと歌ったの俺で２人目なのか。少ねえな。
「じゃあねー！轟焦凍クン！！」
「…おお。いや、待て。お前は誰だ」
自分の名前を知っているのは、体育祭があったから納得いく。だが、お前誰だよ。
知らない女子生徒に一緒に歌おうと誘われて子供向けの歌を歌っただけの轟焦凍は、食堂の入口に取り残された。
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染井芳野(プロフ) - 怠惰な強欲さん» コメントありがとうございます。すげー名前っすね。気になっていただけて嬉しいです。更新してきます。 (2018年4月10日 12時) (
レス) id: 235460ef5a (このIDを非表示/違反報告)
怠惰な強欲(プロフ) - つ、続きが気になります…！ (2018年4月9日 21時) (レス) id: 3ead34adf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：染井芳野 | 作成日時：2018年4月8日 19時
