再会 ページ8
…
時は少し遡り、実技試験が終わってすぐのこと。
あの小豆色のことが気になって仕方ないが、自分から声をかけるのは癪に障る。変に勘違いされようものなら更に癪に障る。そもそも俺があの女をよく思い出せないのだから、声をかける時なんて言えばいいんだ。『俺…君をどこかで…』ってか？どこの大ヒットアニメ映画だボケ。
悶々と考えていたら小豆色を見失った。
…あの女は合格だろう。おそらく相当誂え向きの個性でロボをぶち壊していたし。ポイントだって、俺にゃ劣るだろうがポンポン稼いでいた。
俺だって合格だろうからいずれまた会うだろう。だが、入学式までこのモヤモヤを引きずるのは実に不愉快だ。もう少しで思い出せそうなんだ。もう少しで。
「…つか、よく考えたら思い出す必要ねぇだろが」
あんなクソダサバスタオルのことなんぞ、思い出そうが出さまいが同じだろ。何を必死になっとんだ俺は。
フッとどこぞのクソダサバスタオルを鼻で笑って、俺もさっさと帰ろうと昇降口を出ようとした時。
「こんにちは。久しぶりだね、カツキ君」
「…あ？」
ふいに、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、小豆色の髪を揺らした演習会場のバスタオル女。
「あれ、演習会場ですごい見つめられたから覚えてくれていたのかと思ったんだけど…。
僕、半田杏子。爆豪勝己君だよね？」
はんだ、あんこ。
この女が関わる全ての記憶がビリビリッと脳内でフラッシュバックし、コイツが誰だか、俺にとってどんな存在だったかを全て思い出した。
ぽっかりと抜けていた記憶が、そっくりそのまま元の場所にハマった感覚だった。
「…だったらなんだよ、あんパン女」
「ああっ！嬉しいなあ、思い出してくれたんだね！」
「相変わらずダッサいバスタオル巻いてたな。あのパンチの時の掛け声もなんとかしろや」
「あれはね、『あんパン』と『パンチ』を掛けて『アンパンチ』…」
「そんくらい分かっとるわ！！それがダセェっつってんだよ！」
小学生の時と、ツラがえらく違って見えた。そりゃそうか、５年半も会ってなかったんだから。でも、今までこの女の記憶を無くしていたのが嘘のように、最後に会った時のこいつの表情を鮮明に思い出せた。
「出久君達にも会いたいなあ。高校では同じクラスになれるといいね」
「合格する前提で話すなボケ。自意識過剰なんだよ」
「ごめんね」
さっきまでの苛立ちはどこへやら、俺はその時心底喜んでいた。
理由はカンタン、俺がこいつに惚れてたからだ。
現在進行形で。
…
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みかん - え、すごい面白い…独特なのにめっちゃ面白いです！頑張ってください！！ (2018年3月14日 17時) (
レス) id: 4389491407 (このIDを非表示/違反報告)
タラバガニ - 他の小説とは違った魅力に溢れてますね！ 本当に面白いです！ 好きです！← 応援してます！ 頑張って！ 下さい！！ (2018年2月25日 10時) (レス) id: 74808f0e2e (このIDを非表示/違反報告)
月華姫 - 新しい斬新さに惹かれました！最初は名前変換無いのかと思いながら読みましたが、そんなの関係無しにハマりました！いつか轟くんとの絡み楽しみにしています！！！これからもサイト頑張ってください！ではっ♪ (2018年2月5日 8時) (レス) id: 12879f1d64 (このIDを非表示/違反報告)
わたみず(プロフ) - なんだこの面白い小説...w 更新頑張ってください！ (2018年1月25日 23時) (レス) id: f57990a05b (このIDを非表示/違反報告)
ブロック(プロフ) - 何この狂気に満ちた世界観。すごく好きです頑張ってください！ (2018年1月14日 12時) (レス) id: 3e892ea4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：染井芳野 | 作成日時：2018年1月9日 12時
