参拾陸輪目 ページ38
「ほら、待望の報告書ですよ。先輩。」
「痛い痛い！叩くんじゃないよ一条！」
「無性に腹が立ったので。」
「そう。それで、あの本丸で何を見たの？」
「それは報告書に全部書きました。」
「そうじゃなくて…口で説明して欲しいなーって。」
「…審神者さんは亡くなっていて、胸に折れた秋田藤四郎様を抱いていました。そのせいか時間軸がずれて最近亡くなった筈なのに10年以上は経っていました。」
「その他は？」
「発見出来た刀剣は、審神者さんが抱いていた折れた秋田様と、身体が朽ちて擦り切れた意識だけで槍を取った御手杵様と、どういうわけか無事だったこの膝丸様だけでした。」
「そうかそうか。忘れてたけどタオル。」
「犬じゃないので自分でやりますから触らないでください。」
「はいはい。」
「残りの刀剣は見つけられませんでしたが、審神者さんが亡くなった事で池に沈んだものや、鍛刀部屋の窯に身を投げたものもいたでしょう。屋根裏は柱が腐っていたので潰れていました。その中にもいたかも知れないです。」
「内側から門が開けられた様子は？」
「ありました。しかし、審神者のバックアップ無しでは急速な時間の奔流に着いていけるのは不可能に等しいかと。」
「そっかぁ…」
「もう2度あの本丸には入れませんよ。」
「え、そこ何とかならないの？」
「俺が今すぐにあそこに行っても、恐らくもう30年は経ってます。このまま、あちらを切り離してしまった方が損害は少ないです。」
「分かった。コード1は今すぐに切り離してくる。一条、それでいい？」
「はい。」
「あ、そうそう、その膝丸は君が持ってなさい。いつか顕現したら、あの本丸の話を聞くんだよ。」
「はい。」
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作者名：蒼麻 | 作成日時：2018年2月20日 20時
