【d!】世界崩壊までのカウントダウン (ページ17)

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無力ノ鎖　#2 ページ17

辺りは静まり返った。
グリムが連れていかれた。
へなりと鬱先生は座り込む。

《アリスちゃんの体は限界だった。なのに君の事を守っていた》

ヒラの声と言葉が脳裏に焼き付く。
その言葉は鬱先生の後悔という名の鎖となり、思考を鈍らせる。

「また、あの人は無理してて…俺はッ！」

ジワリと目に熱いものが伝わる。
無力感が増幅され、精神が侵されていく。

「アリス…アリスが居ない…置いて行ったのか?」

グルッペンの弱々しい声が鬱先生耳に届いた。
チラリと見ると、何時も自信に満ちていた紅い瞳は虚ろで、小刻みに体が震えている。

「俺は、総統やから……しっかりしんと」
「グルッペン。無理はダメめう～」

オスマンが頭に触れる。
グルッペンは瞳を閉じて、すやすやと眠りについた。
どうやら能力を使ったようだ。

「師匠を連れてった奴は何処やッ!?」

ゾムが叫んだ。
怒りで近くにあった椅子をけると、バキンという音と共に折れた。

「…インカム応答なし。GPSは北に向かっとる」

ロボロが専用の機械を取り出す。
いつもは「天」と書かれた紙をつけているが、探す時に邪魔になるのか瞳をさらけ出している。
エーミールがモニターに張り付くロボロを手伝いに行く。
唇をかんでいて、後悔が目に見えていた。
しかし、取り乱すことは無く、冷静を保とうとしている。

「今は取り乱している場合じゃない」

それは、自分への戒めの言葉にも受け取れる。

「でも、アリスはこうなることを知っていた?」

ひとらんらんの言葉に幹部全員(グルッペンは除く)がひとらんらんに注目した。

「いや、敵だったとかじゃなくて、単純に考えて可笑しくない?
　俺たちに言わなかったことと関係があるかも」
「せやな…ヒラもアリスと知り合いっぽいしな」

シャオロンがひとらんらんの言葉に続けた。
ほかの人達も冷静を取り戻し始めているが、ゾム、コネシマ、鬱先生の三人は本調子ではない。

「じゃぁ、師匠は俺達と別れる事を知ってて?」

ゾムの言いたいことはこうだろう。
別れるのを知っていてその人たちと過ごすなんて、辛いことをグリムはやってのけたのか。
一度背中を預けた友人たちと別れるのは辛い事だ。
現実から逃げたくなるだろう。

「ニャーオ」

黒猫が小さく鳴いた。
その突然と現れた猫は、翡翠色の瞳でじっと一人を見つめていた。

「貴方はアリスさんの…リンクス」
「は?リンクスって妖怪で未来が視えるって…い、う」

鬱先生の発言に全員はハッとする。