最強魔術師と凡人と #7 ページ7
「これからも時々マーケットに出店するから。どうかご贔屓に」
「はい！ 今度はちゃんと買いに来ますから！」
美しい魔女に見送られ、私とソロモンは市場をあとにする。
空は相変わらず夜を描いているが、D.D.Dを確認すれば時間はとうに夕飯時を示していた。
チャットには兄弟たちからの通知がいくつも届いている。
心配をかけてしまっているようだ、早く帰らなければ。
「予定よりも遅くなっちゃったね。このまま送って帰るよ」
街中は喧騒が収まるどころか、時間が経つにつれ通行人もとい通行悪魔の数が増えていく。
食に酒に、女に男に。
混沌とした欲に溢れかえる魔界の夜を、道の端を歩きながら私はじっと見つめる。
何事もなく、とまでは言えないものの、ソロモンのおかげで足止めを食らわずに嘆きの館まで到達した。
館からはギャーギャーと住民たちの騒ぐ声が外にまで響いている。
ルシファーの雷が落とされるのは時間の問題だろう。
今日は何匹の蓑虫が吊るされるのやら。
ドアノブに触れ重たい扉をゆっくりと開ける。
ただいま、と声をかけながら入るつもりだったが足が止まった。
私を見下す館の主が玄関口を塞いでおり、中に入れなかったのだ。
「随分と遅い帰宅だな、何か言いたいことは？」
「た、ただいま……」
「おかえり、伊吹。ああそっちの人間はもう用済みだ。帰って良いぞ」
「ちょっとルシファー、ソロモンはわざわざ私を送ってくれて――」
反論する私を彼は無言の圧力で押さえつける。
たかだか2桁の小娘に反抗の手段はなく、出来ることと言えば虚勢を張って睨み返すことくらいだ。
ルシファーの後ろには面白そうだと見物する悪魔数名、彼と同じくソロモンに敵意を向ける悪魔数名といったところであった。
一方でソロモンは私と違って怯えている様子はない。
中身の読めない笑顔で真正面から彼と対峙している。
「遅いといっても許容範囲じゃないかな。契約もしてない人間相手に君がそこまで過保護になるなんてね」
「彼女は貴様と違って自衛手段に乏しい。保護者として、心配するのは当然だろう？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：センカ | 作者ホームページ：livedoor.blogcms.jp/lite/blog/cenma524/
作成日時：2021年7月18日 20時
