名前 ページ9
彼は本を置くとうーんと背伸びをした。
すると膝からカランと音を立てて
ステンレス製のの栞が地面に落ちた。
それを拾って彼に差し出す。
「……これ。」
「……あぁ。」
「綺麗だね、その栞。」
「…そうでもねぇよ。」
大事そうに栞を眺める彼。
みんなも彼を優しく眼差しで見ていた。
きっとこの栞はこの人にとって大事なもので
みんなもそれをちゃんと分かってるんだろう。
なんとなく。直感でそう思った。
「緋織、みんなの名前、覚えた？」
「…えっ、」
急に樹から話を振られ焦る。
「はいっ、じゃー俺から！」
「えっ！あ…えっと、慎太郎くん。」
「なんか呼び方硬いなぁー」
「…じゃあ慎ちゃん…？」
「はいっ俺、慎ちゃん呼びゲットー！！！」
「じゃあ俺は！俺は覚えやすいっしょ！」
「…うん、ジェシー笑」
「はい！おれ呼び捨てgetー！」
「じゃ、次俺ね！俺が最初に声かけたんだから！」
「そうだね、ありがと樹。」
「はいっ俺も呼び捨てー！！」
「はいっ！じゃあ俺は？」
「えっと、コーチ。」
「いや違うんだよな、高地なんだよな！」
「「コーーチーーー！！！」」
「うるせぇ！お前らのせいだぞ！！！泣」
「あっ、次俺？」
「えっと、きょも、だよね？」
「あ、そっか、俺言ってなかったわ。俺京本大我。」
「大我…くん？」
「呼びやすい方でいいよ。」
「うん。じゃあきょも、かな。」
5人の名前をちゃんと言えたところで、
ほっと胸を撫で下ろした。
「緋織、最後残ってるよ！」
「あ！そーじゃん！ほら緋織最後！」
「えっ、えっと…」
「お前ら、俺はいいよ。」
「そんなこと言わないの、北斗！」
「あ！コーチが答え言っちゃった！」
「あ！コーーチーーー！！！」
どこいっても騒ぐ慎ちゃんとジェシーに
高地が責められ、でもなんだか楽しそう。
「北斗…」
あたしが呟くと何故が静まり返るみんな。
みんな彼の反応を見てる。
「…おぅ。」
目線はあたしの方じゃなかったけど返事はくれた。
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作者名：hiori | 作成日時：2019年10月3日 2時
