孤高のアネモネ【HokutoMatsumura】 (ページ19)

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side 北斗ページ19

突然現れた翔と名乗る男。

青ざめた顔の緋織。

お互い敬語で話す2人は兄妹には見えない。

き「さっきの、こないだの人だ」

俺の隣で京本が呟いた。

あぁ、前に京本と高地が見たっていう…

けどさっきの翔って人、彼氏にも見えなかった。

去って行く"翔"を見つめる緋織の背中を見ると
少しだけど震えてるように見えた。

「緋織」

俺は無意識に緋織の名前をを呼んでいた。

「緋織、とりあえず飯…食べない？」

どうして名前を呼んでしまったのか、

どうして勝手に手が動いて緋織の腕を掴んでしまったのか。

自分でも分からないまま、
緋織を引っ張ると保護者席のテントへ向かう。

慌てて樹たちが追いかけてきたけど
みんな口を開かず顔を見合わせていた。

高「ねぇ、緋織？」

落ち着いた口調で、高地が切り出した。

歩いてた足を止めて、みんなが高地を見る。

高「緋織、俺たちとお昼一緒でいいんだよね？」

緋織「……うん。」

緋織は何も言わなかったけど、
緋織に何かあるのはみんな分かって。

だけど高地の優しい問いかけに緋織は頷くと
ゆっくり話し始めた。

緋織「あたしね、両親いないの…

だからね、みんなとお昼食べれるなら嬉しいな」

そう言った緋織の腕は

もう震えてはいなかったから

俺は緋織の腕を離すと、

「とりあえず親たち探さね？」とみんなに言った。

何かある事は確かで、それが何なのか分からないけど
その話は俺らから聞く話じゃないって事は分かった。

それに緋織にとって今はそのタイミングじゃない事も。

帰り際にに見せる寂しそうな顔とか

ふとした瞬間の吸い込まれそうな真っ黒な瞳とか。

たまに見せる緋織の"影"みたいなところは
俺はなんとなくだけど感じ取っていて。

たぶん、それは京本や高地も同じはず。

緋織が転入してきて1ヶ月。

とっくに緋織を中心に回り始めた俺らの日常。

気付けば緋織を目で追ってしまう俺は
それが何でなのか、

…その正体に気付かないでいた。