突然に ページ18
あっという間に午前の部が終わり、
私のクラスは立て続けに1位を独占。
元々ひと学年に4クラスしかないため
ほとんどの種目がクラス対抗。
上級生もたくさんいる中
飛び抜けて運動神経の良い慎太郎と北斗のおかげで
総合順位も1位と順調。
"午後の部は13時からスタートです"
そんなアナウンスと同時に一斉に応援席から
生徒たちが立ち上がる。
あ…
そうだ、お昼ご飯どうしよう。
そっか、今日はいつもと違うんだった。
樹「よっしゃ飯だー！腹減った！」
慎「今年どうするどうするー？？」
ジ「多分みんな一緒にいるんじゃない？」
樹「うん、田中家がたぶん場所取りしてると思うよ」
高「あ、緋織はどうすんの？」
「え？あたし？…えっと…」
き「緋織の家族も来てるなら、一緒にどう？」
ジ「俺ら毎年家族も一緒に食べてんの！緋織も来なよ！」
「あ…えっと、あたし…「緋織さん」
あたしがどう言おうか言葉に詰まっていると
後ろから声がした。
「緋織さん、全然学校の事教えてくれないので。
痺れを切らしてこっちから来てしまいました」
そう言って、この暑い中スーツ姿で立っていたのは
私の祖父と名乗る人の秘書、翔さん。
「翔さん…」
翔「会長も少し寂しそうにされていましたよ」
「ごめんなさい…」
翔「あーあ、もう。謝ることなんてないのに」
「……。」
翔「一応、お弁当持ってきたんだけど…みんなでお楽しみかな？」
「あ、いや、その…」
後ろを振り返ると困惑顔の6人。
なんて言えば良いか分からず戸惑っていると、
翔さんがあたしの横を通り過ぎ、6人の前に出た。
翔「こんにちは。いつも緋織さんがお世話になっております
…私、櫻井翔と申します」
樹「え、あ、ども…」
翔「緋織さんから何も聞いておられないようですね？」
樹「え？」
翔「緋織さん、お弁当は渡しておきます。すみませんが私そろそろ社に戻らなければなりませんので」
「…うん…！大丈夫ですよ、ありがとう」
不穏な空気の中、翔さんはあたしの耳元に口を寄せると
「少しは周りに甘えてもいいのでは？」と囁き
爽やかな笑顔で場を去っていった。
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作者名：hiori | 作成日時：2019年10月3日 2時
