孤高のアネモネ【HokutoMatsumura】 (ページ45)

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side 北斗ページ45

櫻井さんの話は終わらない。

もう、話を止める事さえ俺にはできなかった。

翔「…俺が緋織に初めて会ったのは事件の直後、

会長…緋織の祖父が緋織さんを引き取ると決まり

保護されていた警察署で対面した時だ。

その時俺は今の会社でインターン中でね。

親父の背中見て仕事してたんだけど、

ニノづてに緋織の事もたまに聞いてたから

俺も親父達について同行する事になったんだ。

今でも忘れられないな…

殆どの人が一生の間でも経験する事のない悲惨な体験の後、

たった14歳の小さな女の子は俺たち大人に囲まれても

泣きもせず、

ずっと、

ずっと、

真っ直ぐ前だけを見つめてたんだよ…

あんなに鋭い視線を子供に向けられたのは

あれがきっと最初で最後だろうな。

緋織の祖父である会長の事、

そして本当の両親の事、これまでの事の顛末。

14歳の女の子に聞かせるような話では到底無かった。

だけど、彼女はそれを聞いてもなお、

…いや、それすら初めから分かっていたかの様に

俺たちにこう言ったんだ。

『ご足労、ありがとうございます。』

『行きますよ、どこへでも。』

ってね…。」