孤高のアネモネ【HokutoMatsumura】 (ページ41)

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side 翔ページ41

さて、どうしたものか。

翔「…松村くんはそれを知ってどう思う？」

北「正直、事件の詳細は知りません。

緋織が言い出すまで待つつもりです。

…だけどこの前みたいな事が起きるなら、

今緋織を守れるのは俺しかいないと思ってます」

翔「……緋織の事、好きなんだ？」

北「えっ？」

翔「…あれ？俺、余計な事言っちゃった？」

30の男からすると高校生の青春なんて痒い話。

痒いからって余計な事言うもんじゃないと苦笑する。

北「緋織は…大事な…仲間、です」

俺が「そっか」というと
彼は少し遠くを見つめながら言葉を続けた。

北「時々、…何か諦めたような目をするんです。

バカばっかやってる俺らを1番気にかけてくれて

緋織も何か辛いはずなのに微塵もそれを見せようとしません」

翔「……昔からね、緋織は強がりなんだよ。

言葉通り強がってるだけだけどね…。

…松村くんはさ、

俺に事実を確かめに来たんでしょ？

それはこの事件の真相を聞く覚悟があっての事だよね？」

そう。

事は簡単に言えるような事ではない。

それに簡単な事件でもない。

言う側も聴く側もそれなりに重荷になる話だ。

北「…はい。

俺たちもう高校生ですけど、

世間的にはまだガキです。

だからちゃんと"大人の人"から判断してもらって

"許可"を貰ってから緋織を守りたいと思ったんです」

なるほどね。

俺はすっかり空になった珈琲カップを見つめると

はぁ、と一つ深い溜息を吐いた。

翔「松村くん、…君は賢い、というか策略家だな。

俺が君に事実を伝えたとしたら

君は緋織との約束を破る事になるけど

同時に俺も共犯になるって事で、

事実を伝えないにしても、緋織に関して

俺が付きっきりになるわけにもいかない。

この前の緋織に起こった事を聞かされたしな。

放って置くわけもいかない。

となれば。

君に緋織を頼むなら結局、共犯になるしかないって事だ」

北「…すみません」

緋織から直接話を聞くと、"待つ"と約束した彼。

だがこのまま待っていたら緋織に何かあった時

手遅れになると思ったんだろう。

過ぎた事とは言え世間を騒がせた程の事件だ。

まだ未成年の彼らだけで守り切れる訳がない。

彼の言う"大人の人"の保証が欲しい訳だ。

翔「…君には一杯喰わされたな。

けど相当重いと思うよ…それでも良い？松村くん」

そう言うと彼は静かにうなずいた。