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そんな、1番尊敬していて、大好きな先輩は今日卒業ライブを迎える。
先輩は就職をせず、このまま芸人を続けるらしい。
それでもやっぱり卒業となると特別なものがあった。
先輩も卒業ということで気合いが入っているのか、ここ最近は前のように会ったりご飯に行ったりは忙しくて出来なかった。校内でたまに先輩を見かけたけれど、少し痩せたような気がした。
やがて劇場が暗くなり、先輩たちの学生ラストステージが始まる。
もちろんどの先輩のネタも過去一仕上がっていたが、やはりA先輩のネタが1番面白かったと思う。見る人を引き込む語り口に、幾つもの伏線回収。誰も想像がつかないボケと完璧なタイミングのツッコミ。
すっかりネタに引き込まれていた。
気づけばネタは終わっていた。
ライブ終わりの飲み会は、今日は先輩たちだけでやるらしい。
ただ、どうしても感想を今、直接伝えたくて、俺は関係者出口にいた先輩に
「あの！今日も面白かったっす！またネタの相談お願いします、あと飲みいかしてください！」
と大声で声をかけた。
先輩は振り返って
「うん、ありがとうね」
といつも以上に眉を下げて笑った。
それは久しぶりに見た笑顔だった。
それから、先輩とは連絡が取れなくなった。
他の先輩に聞いても連絡は繋がらず、家もいつの間に引っ越していたらしい。
なんだよ、1番仲良かったんじゃないのかよ、
なんでも話してたじゃねぇか、先輩
裏切られたような気分だった。
と同時に、心にぽっかりと空いた穴が存在を主張してきて、自分が先輩の事を好きだったのか、その淡い好意に気付かされると、更に胸を締め付けられる。
卒業公演のDVDも、当分は見る気にならない。
しばらくして、新入生が入り、俺は部長になった。その忙しさと賑やかさで少しだけ先輩のことを思い出さずに居られるようになった頃、卒業公演のDVDが引き出しから出てきた。
ケースを開けて真新しいデスクをセットする。
画質が悪くぼんやりとした画面に、懐かしい先輩が映る。
先輩が作る完璧なネタは、今見てもやっぱり完璧で引き込まれる。
一瞬、先輩の声が震えた。
はっとして、画面にうつる先輩を見ると、
先輩は泣いていた。
涙を堪え、肩を震わせながら。必死に、声が震えないように、言葉を紡いで、舞台に立っていた。
俺は、あの日、それに気づかなかった。
そのことにも、今になって、初めて気がついた。
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輝(ｶｶﾞﾔ)(プロフ) - カンナさん» コメントありがとうございます🙇♀️「最後」っていうのの脆さ(？)が合うな〜と思いまして書かせて頂きました！めちゃくちゃ嬉しい…こちらこそ本当に読んでいただいてありがとうございます😭 (2月14日 2時) (
レス) @page3 id: 32eefe209c (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - クリープのこの歌好きなので当てはめてもう一度読むと心がぎゅっとなりました、ありがとうございます… (2月13日 2時) (レス) @page3 id: e855b28e33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝(ｶｶﾞﾔ) | 作成日時：2024年2月10日 1時
