西のヘタレ、振り向いてほしいので頑張ります。【文スト】【完結】

恋して　9日 ページ9

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「…………え、？……え！？」



思わず椅子ごと後ずさってしまった。
ちゃん付け？え、何で………。



『……駄目？』



上目遣いで首を傾げる姿は、滅茶苦茶可愛い。
狡い……狡いぞAさん………っ！



「否！別に駄目とかじゃなくてですね！！
　その、僕なんかが……良いのかな……って」

『別にいいよ。同い年だしね』



それでも何だか恥ずかしくなってしまう。
そんな僕を見て、Aさんはクスリと笑う。



『ふふっ、敦君、顔真っ赤だ』

「触れないで下さい……」



チラリとAさんを見る。
手を口に添えて笑うのは、きっとAさんの癖。

笑えば、気品もあるが、いつもの取っ付きにくい雰囲気は消え去り、あどけない可愛らしい印象になる。



『んー分かった。一回だけ！一回だけ呼んで？』

「一回……」

『物足りない？』

「否、それでも、何だか、恥ずかしく……」

『敦君は初心だね。でもお願い。
　一回だけで良いから、小さくても良いから』



余りにもおねだりが上手すぎる。
いつもはあんまり喋らないし、表情だって変わらないのに。

如何してこういう時に限ってこんな風になるのだろう。

それでも、好きだけれど。



「A……ちゃん……」



恥ずかしすぎて、Aさんの顔は見えない。
けれど、『ふっ』と声を漏らしたのは分かる。



『ありがとう。仕事、頑張ってね』



艶々とした綺麗な髪を揺らして、Aさんは自分の席へと戻った。

すると、国木田さんと騒いでいた太宰さんが近より。



「良かったね、珍しいよ、あんなA」

「……嫉妬してます？」

「勿論」


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