西のヘタレ、振り向いてほしいので頑張ります。【文スト】【完結】

恋して　29日 ページ30

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映画を見ていて、隣に座るAさんには、まだ慣れない。

相変わらず、距離は近い。
横顔は美しくて、なんだか良い香りがして、
艶々した髪はサラリと揺れて。

僕のこの思いは、日に日に大きくなっていく。


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映画が終わり、外へ出れば既に暗くなっていた。



『なんかあっという間だったな…』

「そうですね……」

『如何だった？あの映画。
　私、結構面白かったと思うんだけど……』

「はい！僕も面白かったです！
　伏線回収が凄くて……」

『だよね！よかった〜』



安心した様に笑うAさん。
僕もなんだか嬉しくて、思わず笑った。



『伏線回収といえば、滅茶苦茶太宰に似たキャラいなかった？』

「嗚呼、あの頭の回転が早い人ですか？」

『そうそう！イケメンの人！
　あの人格好良かったな〜』



前回は僕に似てるという人を好きと言っていたのに。
今回は太宰さんに似てる人を格好良いと言う。

Aさんのこういう所、本当に狡い。

モヤモヤしてしまう。
太宰さんを好きだったら如何しよう。
僕に興味が無かったら如何しよう。
今日も仕方なくだったら如何しよう。

全部、如何しよう。



『…敦君？』



気が付けば、僕の足は止まっていた。
俯いているから、見えるのは足元だけ。



『如何かしたの？』



何だか、とても不安になった。
僕だけを、見ていてくれたら良いのに。

こんな思い初めてだから如何すれば良いのか分からなくて。
これを伝えたいけれど、彼女と離れるのが怖くて、
いつも一歩引いてしまっていて。



『何か言ってくれないと、分からないよ』



そうやって僕に優しくしてくれる。
そんな所が、大好きなんだ。

期待しちゃうから、優しくなんてしてほしくなかった。

けれど、彼女に冷たく接される世界だなんて、
僕は嫌だ。

彼女と______Aさんと、ずっと側にいたい。



「……僕が、貴女を好きだと言ったのなら、
　Aさんは、如何しますか」


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