西のヘタレ、振り向いてほしいので頑張ります。【文スト】【完結】

恋して　22日 ページ23

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「Aさん。僕の声、聞こえますか」



何だか怖い。何かが怖い。
けれど、それは分からない。

彼女が、消えてしまいそうなこと？
だから僕は、確認を取った？



『聞こえるよ。前ほどじゃあ無いけど』



でも治るから、と。
窓から僕に視線を移した。

いつもは此処で微笑みかけるのに。
今日は、まだ、笑顔を見ていない。



「…大丈夫、なんですか」

『大丈夫だって医師も与謝野先生も言ってた。
　だから、きっと絶対に大丈夫。

　大丈夫の筈………なんだけどね………。
　私は、ちょっと怖いかも…』



また窓を見つめてしまうAさんの表情は、
よく見えない。

その時。僕の頬に何か温かいものが滑り落ちた。



「あれっ……」

『……敦君……』



僕の声を聞いて振り向いたAさんは、
僕を見て、目を見開いた。



『なんで……泣いてるの……』

「分からない…です……」



如何して僕は泣いている？
彼女が、Aさんが。



「僕、Aさんが……消えちゃいそうで。
　僕達から離れていってしまいそうで。
　僕達の声が、聞こえなくなってしまいそうで。

　全部が、怖くなって……」



すると、暫く黙って見つめていたAさんは、
いきなりふっと声を漏らして笑う。



『ほんと、律儀で純粋だよね敦君』

「……！」



今日、初めて見た笑顔。
その笑顔は、今までで一番輝いていた。


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