恋して 18日 ページ18
***
「Aと、映画見に行ったんだって?」
あれから次の日の仕事中。
太宰さんは変わらずサボりながらそう聞いた。
「行きましたけど……何故知ってるんです?」
「今朝Aがナオミちゃんに話してるのを見たのだよ」
Aさんが………。
何だか少し、嬉しくなった。
「Aって、あんな風に笑うのだね」
「……?」
何か思いの籠る言葉。
太宰さんは、本当にAさんが好きなのだろうか。
でも好きじゃないと言うのなら、此処まで寂しそうな表情はしない筈。
何だかモヤモヤしていて、何も言えない僕を見て、
察したのか太宰さんはいつも通り微笑んだ。
「安心しなよ。私、もう諦めたから」
「………え?」
思いも寄らぬ言葉に思考が停止する。
太宰さんは、手に入れると誓ったものは必ず逃がさないイメージがある。
そんな太宰さんが諦めるなんて………。
「な、何企んでるんですか……?」
「企みだなんて人聞きの悪い。
自 殺主義者に二言は無いからね」
「でも、何で諦めるなんて……」
ライバルであったかも知れない太宰さん。
それでも、何だか諦めるという選択は勿体無い気がした。
「一つ、Aの好きなタイプと私が真反対。
二つ、アピールしても全く相手にしてくれない。
三つ、彼女には既に好きな人がいる。
………こんなものかな」
Aさんに………好きな人……?
分からない。誰だろう?どんな人なんだろう?
「太宰さんでも届かないなら、
僕なんて尚更無理なんじゃ………」
「いや、そんな事は無いさ」
太宰さんはいつもの様に話していく。
「只、敦君は知らないと思うが、
Aはあんなに笑う女性じゃなかった。
そもそも自分から話し掛けに行くだなんて……。
君が来る前のAには有り得ない事だったよ。
Aは、自分から進んで君と話し、笑い、
時には共感する。
恐らく、Aは、これでもかと言う程に、
敦君に心を開いているよ」
その言葉に、何だか心に自信が湧いてくる。
不思議だった。兎に角、不思議だった。
「この私が譲ってあげたチャンスだよ?
ちゃんと努力してね、応援しているよ」
ニヤリと笑う太宰さんを見て、僕は大きく頷いた。
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推し丸様☆(プロフ) - 敦くんの話、最後まで良かったです!読むのがすごく楽しかったです!作者さんが活動休止、辞めるということはさみしいし、とても悲しいですけれど、最後まで連載、無理しない程度に頑張ってください!ずっと応援しています! (4月7日 21時) (レス) @page32 id: a7c7bf6202 (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - 完結おめでとうございます!!主様がお休み?になるのは寂しいですが、もう一方の連載も頑張ってください!!!楽しみにしてます!!お体には気をつけて!! (4月7日 20時) (レス) @page32 id: 140287e0ee (このIDを非表示/違反報告)
そこら辺の壁(プロフ) - 推し丸様☆さん» いえいえ!此方こそご許可ありがとうございました!お互い、頑張りましょうね! (3月29日 21時) (レス) id: 09395bcd27 (このIDを非表示/違反報告)
推し丸様☆(プロフ) - そこら辺の壁さん!宣伝ありがとうございます✨もっともっと、楽しいなと思っていただけるよう頑張りますので、どうかあたたかく見守っていただけたらと思います!(*˘︶˘*).。.:*♡ (3月29日 21時) (レス) @page20 id: a7c7bf6202 (このIDを非表示/違反報告)
そこら辺の壁(プロフ) - wakaさん» コメントありがとうございます!時々waka様にはコメントをいただけて、凄く励みになっております!これからも応援よろしくお願いします! (3月20日 21時) (レス) id: 09395bcd27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そこら辺の壁 | 作成日時:2024年3月15日 21時