西のヘタレ、振り向いてほしいので頑張ります。【文スト】【完結】

恋して　11日 ページ11

＊＊＊


「敦さん」



仕事に戻っていれば、ナオミさんの軽やかな声が僕を呼んでいた。



「お疲れ様です、何でしょう？」

「敦さん、映画は興味ありますか？」

「映画………」



僕はずっと孤児院暮らしだったから、
映画は知っているものの、見たことはない。

大きいスクリーンに物語が映し出される。
あの頃は、一度でも良いから観てみたいと思っていた。



「あります！ずっと気になってたんです！」

「うふふ、なら誘ってみては？」

「………え、？」



誘う？誰を？

ナオミさんはニコリと微笑んで、
周りに聞こえない様に小声で話した。



「Aさんの事、好きなのでしょう？」



その瞬間、一気にぶわっと顔が熱くなった。



「否っ、無理、無理無理無理無理無理ですよ！
　僕からしてみれば雲の上の人で…………」

「だからですわ、敦さん。
　男ならば待ってばかりじゃ実りませんわ」

「た、確かにそうですが……」



迷惑じゃないだろうか？
僕なんかが誘って……断られでもしたら………。



「敦さん、モチベーションを保つコツ、
　教えてさしあげましょうか」

「はい……」

「兎に角ポジティブに考えるのです。
　Aさんは、後輩が折角誘ってくれたのに、断る様な人じゃありませんわ」



では、と。ナオミさんは自分の席へと戻った。

Aさんは今任務中………。
定時になったら聞いてみよう。


＊＊＊

恋して　12日→←恋して　10日

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す