Battle_472 ページ31
「おき…総悟も、寝れなかったの?」
「いい加減呼び方慣れろよ」と小さく笑みをこぼしながら総悟は刀を片手に持つ。
「今日呼び始めたんだからまだ慣れない、むり、こそばゆい」
「お、照れてくれるなんて彼氏冥利に尽きらァ」
なんて言いながらぽんぽん、と打粉を菊一文字に当てていく。
「いつもこの時間はここで手入れするんでさァ、最近」
「へぇ。気配しないから全然分かんなかった」
「気配したらてめェが気づいて寝れねェだろ」
「…、まぁ、そう、だけど」
さらりと気遣いできちゃうとこが腹立つ。
総悟のそんなところは、とっくに知ってたと言えばそうなんだけど、改めて思い知らされると…こう、なんか、むず痒い。
だから何も言わずに、大事そうに刀の手入れをする総悟の手を、じっと見つめてた。
.
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「…終わり」
静かに手入れ道具を縁側の床に置いた音に、つられて手入れが終えられた刀を見る。
素人目にはさっぱりだけど、心なしか先ほどより刀が月明かりにより輝いてるみたい。
そこから視線をす…っと、宵闇を照らす唯一の光源へ移す。
まんまるく、真っ白な満月
もう何度だってこの目に写してきたはずの光景が、いつもと違って見えた。
いつもより、泣きそうなくらい綺麗に見えた。
だから、その感情をそのまま口にしたんだ。
.
.
「月が、綺麗だね」
.
ぴたり、と総悟の気配が止まる。
どうしたものかと頭だけを隣に向ければ、少し瞠目している姿。
何かを言おうとして…閉じて、また言おうと開いて、閉じて。
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結局何も言わずにくしゃり、と泣きそうな顔で笑った。
「そうだな」
.
.
「月が、綺麗だねィ」
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あたしよりも大きく骨ばった手が、あたしの髪をぐしゃぐしゃに撫でた。
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ての(プロフ) - ほんとにほんとに初めから最後まで素敵なストーリーで定期的に全て読み返しに来てしまいます!今もなお修正などこの作品を大切に残して頂けて嬉しいです!ありがとうございます!! (2020年3月12日 17時) (レス) id: 892b9edcae (このIDを非表示/違反報告)
レミリア - 内容が、ヤバイぐらい、キュンキュンしてた(//>∀<//) (2019年7月15日 0時) (レス) id: 16253bb5bd (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 最高でした!終わるのが悲しいです.. (2018年11月24日 15時) (レス) id: e8f3408ea6 (このIDを非表示/違反報告)
〇 - カイなのかリクなのかソラなのか、ごちゃごちゃになってますよ! (2018年6月15日 2時) (レス) id: 9c5cfdf043 (このIDを非表示/違反報告)
琴菜 - 面白かったですっ!お疲れ様でした! (2018年2月26日 3時) (レス) id: e179cd3389 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひより | 作成日時:2015年11月28日 15時